京野アートクリニック高輪

新たな卵巣刺激 〜ランダムスタート法について〜

ランダムスタート法とは、これまで月経中より排卵誘発を開始し採卵する方法と異なり、月経周期のいつの時期でも卵巣刺激が可能というものです。今回、このランダムスタート法に関しての論文を紹介いたします。

Flexibility in starting ovarian stimulation at different phases of the menstrual cycle for treatment of infertile women with the use of in vitro fertilization or intracytoplasmic sperm injection.
Ningxin Qin et al. Fertility and Sterility, Vol. 106, Issue 2, p334-341.e1

2014年12月より2015年12月まで体外受精・顕微授精治療を行った150名の方および90名の凍結胚移植症例を卵巣刺激開始時期により、前期卵胞期グループ、後期卵胞期グループ、黄体期グループの3つのグループにわけて、結果を後方視的に比較しています。年齢42歳未満でBMI 17~27 kg/m2、正常月経周期を有する症例で、卵巣機能低下、子宮内膜症(グレード3-4)、多嚢胞性卵巣症候群、過去3ヶ月以内のホルモン治療歴のある症例は除外されています。

1)前期卵胞期グループ(月経2〜5日目より卵巣刺激開始) クロミフェン25mg/日+HMG注射(150〜225単位)+黄体ホルモン剤(MPA:10mg/日)連日 採卵2日前にGnRHアゴニストとhCG注射使用

2)後期卵胞期グループ(月経6〜14日目) 10mm越える卵胞認め、E2:75pg/mlを越えたらGnRHアゴニスト使用、その後クロミフェン25mg/日+HMG注射(150〜225単位)+黄体ホルモン剤(MPA:10mg/日)連日 採卵2日前にGnRHアゴニストとhCG注射使用

3)黄体期グループ(月経14日目以降) 排卵確認後、黄体ホルモン上昇後にクロミフェン25mg/日+HMG注射(150〜225単位)連日 採卵2日前にGnRHアゴニストとhCG注射使用

3つのグループとも卵胞発育したのちGnRHアゴニストおよびhCG注射を使用し、卵を成熟させて34〜36時間後に採卵し、受精卵を凍結保存しました。

採卵数は、前期卵胞期グループ5.7±3.6個、後期卵胞期グループ5.2±3.7個、黄体期グループ5.2±3.9個、臨床的妊娠率は、それぞれ41.5%、45.5%、38.9%、着床率は、それぞれ30.7%、30.2%、27.1%と有意差は認めませんでした.卵の成熟率、受精率、着床率、凍結受精卵数、臨床的妊娠率に有意差はなく、流産率や子宮外妊娠率にも差は認めませんでした。
よって、どの月経周期において卵巣刺激を開始しても同等に有効であり、どの時期からでも卵巣刺激を開始し採卵できること、異なる月経周期で得られた受精卵は同様の発達、妊娠の可能性があることが示されました。

これまでのランダムスタートの課題として、月経からの卵巣刺激開始グループより、排卵誘発剤の注射量が、ランダムな時期に開始したほうが多くなること、乳がん患者等でエストロゲンの上昇を防ぐためレトロゾール(アロマターゼ阻害剤)を使用した場合、成熟卵子の割合が減少するということが上げられておりました。今回も、月経時に開始より、ランダムスタート群では、排卵誘発剤HMG投与期間と投与量は多くなる傾向にありました。

筆者らは、2009年より遠方から治療期間の限られるような患者を対象に黄体期からの卵巣刺激を開始し採卵の試みを開始しました。黄体期での卵巣刺激ではLHサージが起こらず、卵巣過剰刺激症候群発症頻度は低かったという結果でした。また、黄体ホルモン剤を経口的に投与すると卵胞発育を妨げることなくLHサージを防ぎ、さらに卵胞期の使用では、早期のLHサージの防止にもなることから、より柔軟な卵巣刺激ができると考え、今回の研究を行っています。黄体ホルモン剤の経口的投与でのLHサージの抑制は、アンタゴニスト注射より廉価で注射を減らせるというメリットもあります。

卵胞は常に供給されており、自然の月経周期では周期の開始にあった卵胞がホルモンの作用で発育し選ばれたものが排卵します。しかし常に供給されている卵胞ですので、どの時期でも卵巣刺激すれば発育し採卵は可能という原理です。ただし月経周期と無関係ですので、その周期での胚移植はできません。卵子凍結や全胚凍結を行う場合に有用です。

これまでランダムスタート法は、白血病等のがん患者の化学療法や骨髄移植前の緊急妊孕性温存のための卵子採取が適応として、当初導入されました。今後は、海外在住で短期間日本に滞在して治療予定の方や年齢等の因子により治療を急ぐ方などの受精卵凍結にも、適応が拡大されてくると思われます。

京野アートクリニック(仙台) 医師部 戸屋真由美
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