京野アートクリニック高輪

受精卵の培養は何℃が最適?

受精卵を培養するインキュベーター内は、女性の体内(卵管)に近い環境になるように設定されております。卵子、受精卵を培養する上で温度は重要なポイントです。

今回ご紹介するのは、36.5℃と37.0℃のインキュベーターで培養した時の胚発生とその後の妊娠率等を比較した論文です。

【論文タイトル】
Comparing 36.5℃ with 37℃ for human embryo culture : a prospective randomized controlled trial

【著者】
Mohamed Fawzy et al

対象

2012年11月から2015年12月にエジプトのIVFセンターでICSI(顕微授精)を施行した391名の患者。

方法

ICSIを施行し、36.5℃のインキュベーターで培養した194名の患者による受精卵のグループと37.0℃で培養した197名の患者の受精卵のグループとで比較した。
どちらのグループもCO2濃度、O2濃度、pHは同様にし、培養液、培養容器(培養するための入れ物)は全て同じものを使用した。
また、凍結精子、TESE(精巣内から直接、精子を採取する手術)精子を用いた症例は除いた。

結果

受精率、培養3日目の良好な受精卵の割合、培養3日目でコンパクション(発生の進み具合)した受精卵の割合、良好な胚盤胞の割合、受精卵の凍結保存率においてそれぞれ36.5℃のグループよりも37.0℃のグループで有意に高くなった。培養3日目の分割率は36.5℃のグループで有意に高かった。
その後の妊娠率、妊娠継続率、流産率、双胎率に有意な差はなかった。

以上の結果より、36.5℃での培養と比べて37.0℃で胚発生が改善していました。培養3日目の分割率において36.5℃のグループの結果が良かった理由として、子宮や卵管は体温よりもやや低いとの報告があり、受精卵を培養する温度の範囲内であったからではないかと述べています。

しかし、質の良い受精卵を得るためには37.0℃での培養が最適だと考えられます。0.5℃の差ですが、受精卵にとって培養環境はとても重要であるということが分かります。

京野アートクリニックの培養環境

当院では、すべてのインキュベーターの温度を37.0℃に設定して培養を行っております。毎日、朝と夕方に培養士が表示される温度に異常がないかをチェックし、さらに1週間に1度、温度測定の装置を用いて実際の温度を測っています。

この温度を測定する装置も1年に1度校正し、正しい温度を測定できるように管理しております。また、ICSI(顕微授精)施行時や胚観察時など、卵子や受精卵をインキュベーターの外に出す場合は37.0℃に設定したホットプレートの上に培養容器を置いて作業をしています。

温度のほかにもCO2濃度、O2濃度、pHを測定し、正常な値を示したインキュベーターのみ使用しており、温度やガス濃度に異常がある場合、培養士にアラームの連絡が来るシステムも導入しているためすぐに対応をすることができます。

仙台培養部 片岡
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