コラム 2023.12.09
こんにちは。
今回は当院での社会的卵子凍結の成績が論文として採択されたので、これまでの卵子凍結の歴史を交えてお話をしたいと思います。
【卵子凍結の歴史と懸念点】
凍結卵子を用いた世界初の出産は1986年に Chen Cによって報告されています。(Lancet誌)
また、国内では2001年に当院からはじめて出産を報告しています。(京野、日本不妊会誌)
このころまでは「緩慢凍結法」という方法で卵子が凍結されていましたが、2000年はじめ頃、桑山正成博士が開発したCryotopという機器を使った「ガラス化法」により、2003年にアメリカで、2005年には日本で出産が報告されています。
凍結卵子を用いた児の発育は何か成長に影響があるのでは、と心配する声を伺う事もありますが、当院にて実施した卵子凍結から生まれた116名の児について予後調査を行い、自然妊娠による児と安全性や発育状態が変わらないことも報告しています。(Takeshige、RBM Online誌)
凍結卵子を用いて生まれた児の発育曲線
【社会的卵子凍結の成績】
当院では2014年から社会的卵子凍結を行っており、これまでの8年間の成績がこの度論文として採択されたので、ご紹介します。(Reprod Med Biol. 2023; 22: e12549)
当院にて403人が卵子凍結を行い、そのうち、15%の61人が卵子融解・顕微授精・胚移植を実施し、14人が健康な児を出産しました。
出産した方のデータを見ると、卵子凍結を実施した平均年齢は38.3歳で、最も若い方が35歳、最高年齢は42歳でした。
社会的卵子凍結を実施した年齢の内訳
2023年10月より、東京都では社会的卵子凍結に関して18歳~39歳の女性に対して助成されるようになり、希望者が増加しています。
卵子凍結を行う年齢は、使用時の妊娠出産率を考慮すると35歳より若いことが望ましいのですが、凍結卵の更新料など費用を考慮してすすめることが望ましいと考えています。
2023年7月1日 にシンガポールではじめて社会的卵子凍結が法的に認められましたが、その年齢推奨は21-37歳となっています。
ただ、卵子凍結は実施した年齢と凍結した卵子の数によって妊娠・出産の確率は影響を受けやすいです。
いつが最適かと言うと、妊娠を検討している今その瞬間がその人にとって最も良い時と言えます。
凍結した卵子個数と年齢を用いた出産確率
(Polyakov A. et al. AJGP, 52; 2023)
【最後に】
卵子凍結を実施している施設も増加しており、実際にどこで実施するかを選ぶ際には、ホームページの情報を参考にすることが多いと思います。
クリニックのクチコミや通いやすい距離か、など、気になる点は多いかと思いますが、特に気にしていただきたい点は
を気にかけていただきたいと思います。
ご自身で視野をひろげて広く情報収集し、人生設計を立ててください。
卵子凍結を実施するか迷っている場合は、まずは一度受診していただき、十分に理解・納得の上、選択されることをおすすめします。
京野廣一
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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