論文紹介 2018.06.19
不妊治療を受けられている患者さんから、アルコールは摂取してよいか、ストレスはためない方がよいのか?という質問をよく耳にします。
そこで、今回はライフスタイルと体外受精についてまとめた論文をご紹介させていただきます。
タイトル:
Female and male lifestyle habits and IVF: what is known and unknown
男女のライフスタイルとIVF~わかっていることとわからないこと~
雑誌名:Human Reproduction Update, Vol.11, No.2 pp.180-204, 2005
著者:H.Klonoff-Cohen (USA)
こちらの論文は、ライフスタイル(喫煙、アルコール、カフェイン、心理的ストレス)が採卵、受精、移植、妊娠、出生児に与える影響をまとめた総論となります。
タバコの煙はニコチンや一酸化炭素など多くの有害物質を含んでいるため、喫煙は妊娠に悪影響があるという報告は多数あります。男性においては、喫煙は精子に悪影響を引き起こすという報告が数多くあり、精子量や運動率低下と関連があると述べています。
女性側に影響するメカニズムのひとつとしては、能動喫煙、受動喫煙に関わらず、卵子の透明帯を厚くしてしまい、受精障害、着床障害などを引き起こすと考えられています。したがって、男女共に喫煙は体外受精に影響を及ぼす可能性が高いです。
当院においても、治療を受けられる患者さんには、ご夫婦共にまず禁煙をすすめております。
不妊治療の過程は日々のホルモン注射、採血など治療自体をストレスに感じている方が多いと思います。実際に、治療時の心理的ストレスは妊娠率や流産率などに悪影響があるという報告は多くあります。
しかし、この心理的ストレスによるメカニズムは研究段階にあり、今後は、ストレスが体外受精の予後に影響を及ぼすメカニズムをより詳しく調査しなければならないとのことでした。
男女のアルコール摂取は、体外受精へのリスク因子となることが報告されています。
女性のアルコール摂取は、卵子回収率、妊娠率低下、流産リスクの上昇と関連しており、男性においては、体外受精を試みる1ヶ月前にアルコールを摂取しなかった人と比較して、摂取した人は流産率が上昇したとの報告があります。
加えて、摂取量が増えれば増えるほどアルコールがリスク因子となるといった報告もあります。しかし、アルコール摂取が体外受精に影響しないといった報告もあるので、摂取量に依存することが考えられます。そのため、過度の摂取は控える方が望ましいかもしれません。
メカニズムとしては、マウスの実験において、受精前の発情周期にアルコールに暴露されると、紡錘体に作用し、卵子に異常を引き起こします。その卵子で受精しても、異常胚になるため、妊娠初期において高確率で流産すると述べられていました。また、マウスにおいては着床にも悪影響が出るとのことでした。しかし、これらはあくまでもマウスにおける結果であるので、今後さらなる研究が必要であると考えられます。
カフェインの培養液添加は精子の運動率を上昇させることが知られています。しかし、受精率、胚発生率の減少と関与するといった報告もあります。
また、女性のカフェイン摂取は、量と期間依存的に流産率、出生率に影響することが報告されています。女性への悪影響が起こるメカニズムとしては、カフェインがエストラジオールやプロラクチンレベル、排卵抑制、黄体機能に関与すると報告されています。男性においては、摂取量は精液所見に影響しないと筆者らは述べていました。
まとめると、それぞれ以下の項目との関与が認められています。
喫煙されている方はご夫婦で禁煙し、ヨガや旅行などご自身でストレスを発散できる方法を見つけて治療に臨むとよいかもしれません。
アルコールとカフェインについては適宜適当量の付き合いをしていくとよいかと思います。
また、これらのライフスタイルとは別にバランスのとれた食生活を心がけるのも大事になってきます。
必要な栄養や食生活については妊活ノートに記事がたくさんありますので、ぜひご参照ください。
過度に神経質になる必要はないかと思われますが、健康な生活を心がけるとよいのかもしれません。
培養部 小倉
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