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医療コラム

論文紹介 2019.01.22

妊娠とBMIについて ~アジア人女性の肥満と妊娠までの期間との関連性~

どうしたら早く妊娠できますか、

自分で何かできることはありますか、

と質問いただくことがよくあります。

治療も大切ですが、ご自身で心掛けることができる、早く妊娠する体作りも大切です。

妊娠しやすいBMI (肥満度を表す体格指数で、体重 kg/身長 mで算出) は、一般的に21~24 kg/m2くらいと報告されています。

BMI 18.5 kg/m2未満のやせすぎでもBMI 25 kg/m2以上の肥満、特にBMI 30 kg/m2を超えると妊娠率が低下し周産期合併症増加するとの問題も指摘されています。

しかし、これまで多くの妊娠とBMIに関する報告は、欧米人、アフリカ系の女性についてでした。

 

今回は、アジア人女性の肥満と妊娠までの期間との関連性についての論文を紹介させていただきます。

 

『Female adiposity and time-to-pregnancy: a multiethnic prospective cohort 』

Human Reproduction, Vol.33, No.11pp.2141–2149, 2018 L. Loy et al.

 

BMIが高いと長いTTP (time-to-pregnancy: 妊娠までの期間) と関連していることがこれまで多く報告されてきました。

しかし、体の脂肪のつき方とTTPとの関連性はあまり明らかではありませんでした。

比較的低いBMIでも比較的高い体脂肪率および腹部脂肪を有するアジア人女性におけるTTPの研究はこれまでありませんでした。

 

本論文では、妊娠を望むシンガポールの一般住民から登録された

18〜45歳の477人のアジア人女性(中国人、マレー人、インド人、またはその混血)を対象に

肥満度とTTPを前方視的に、12カ月間の追跡調査をし、妊孕性(FP: 妊娠のしやすさ)を評価しています。

18ヶ月以上積極的に妊娠しようとしている、

1型または2型糖尿病と診断された、抗けいれん薬を服用した、経口ステロイド服用、

または過去1ヶ月で生殖補助療法を受けた女性は除外されました。

調査対象の女性の平均年齢は、30.7歳で、

全体的な肥満はBMI、SFT(4か所の皮下脂肪厚の合計)、

TBF(総体脂肪率)、WC(ウエスト周囲長)、WHR(ウエスト/ヒップ比)、WHtR (ウエスト/身長比)、ABSI(ボディーシェイプ指数)で評価しました。

BMIステータスは①<18.5 kg/m2、②18.5-22.9 kg/m2、③23-27.4 kg/m2および④27.5 kg/m2以上の4群に分類されました。

WCは、74cm以下、75〜80cm、81〜86cm、および87cm以上に分類、WHRは<0.80、0.80–0.84そして≥0.85の3群に分類されました。SFT、TBF%およびABSIは4段階に分類されました。

 

結果)

477人の女性の4069周期の調査で168人が妊娠しました。妊娠への試みを6周期および12周期繰り返した後、女性の30%および45%がそれぞれ妊娠に至っています。

BMIの4群の中で、BMIが27.5 kg/m2以上の女性は、マレー人およびインド人で、低学歴傾向、12歳未満で初潮、喫煙率が高く、他のBMIカテゴリーよりもアルコールを消費する割合が低いという特徴がありました。

 

通常のBMI 18.5〜22.9 kg/m2の女性と比較して、BMIが高い、23〜27.4 kg/m2および27.5 kg/m2以上の女性では、それぞれFRが0.66倍および0.53倍と有意に低下しました。

 

図2)BMIとFRの関係

受胎率の基準値はBMI 22kg/m 2である。この曲線は、年齢、人種、教育、出産歴、月経周期、およびWHRに応じて調整されています。

グラフではBMIが23kg/m 2以上になると妊孕性が低下、BMIが35 kg/m 2ではさらに大きく低下しています。

 

SFT(4か所の皮下脂肪厚の合計)が低い下位1/4(25〜52.9 mm)の女性と比較して、厚い上位1/4(90.1 mm以上)の女性は0.58倍と低いFRを示しました。

TBF(総体脂肪率) では、TBF%の低い下位1/4(13.6-27.2%)の女性と比較して、2番目に高い33.0-39.7%および1番高い39.8%以上の女性は、FRが0.56倍および0.43倍とFRが有意に低下しました。

妊孕性低下と高いBMIとの関連は、出産未経験の女性の間で特に明白でした。中心性肥満(WC、WHR、WHtR、ABSI)の測定値は、妊孕性と関連していませんでした。

 

 

この結果は、最適な体重を達成し、総体脂肪率を減少させることは、女性の生殖能力を改善するための潜在的な介入目標となり得ることを示しています。

今回の研究では

アジア人女性では、BMI18.5 kg/m2未満やBMIが高いと妊孕性は低下し、18.5以上~22.9 kg/m2が妊娠しやすいBMIであり、妊娠するまでの期間が短いことがわかりました。

 

肥満またはやせすぎは、ホルモンバランスがくずれて、月経の周期が乱れたり、排卵障害を起こしたりする可能性があります。

早く妊娠するには、治療もしつつ、まず適正体重に近づけることが大切です。

当院では、保健師による栄養指導もおこなっております。気になる方はぜひご相談してください。

 

                           京野アートクリニック    戸屋真由美

 


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