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医療コラム

論文紹介 2019.04.02

当院における卵巣凍結 ~残留凍結保護剤からみた安全性について~

論文タイトル

COMPARISON OF RESIDUAL DIMETHYL SULFOXIDE (DMSO) AND ethylene glycol (EG) concentration in bovine ovarian tissue during warming steps between slow freezing and vitrification.

 

雑誌名

Cryoletters 39(4), 251-254, 2018

 

著者名

Ryuichiro Obata, Yusuke Nakumura, Noriyuki Okuyama, Chisa Sasaki, Yurina Ogura, Nobuya Aono, Seizo Hamano, Tomoko Hashimoto, and Koichi Kyono

 

がん等の病気を治すための治療の副作用によって妊娠する力(妊孕性)が損なわれてしまうことが指摘されています。

そこで、病気の治療を始める前に妊娠する力(妊孕性)を温存することで、将来妊娠する可能性を残すことができます。

当院では妊孕性温存に力を入れており卵子凍結、受精卵凍結、卵巣凍結を実施しております。

卵巣凍結は日本ではまだ十分に普及しているとは言えませんが海外では妊孕性温存の手段として広く実施されています。

 

卵巣凍結の方法には緩慢凍結法(slow freezing)とガラス化凍結法(vitirification)の2種類があります。

 

緩慢凍結法 ガラス化凍結法
凍結保護剤の濃度 薄い 濃い
凍結保護剤の種類 DMSO DMSOやEG
融解時間 長い 短い

 

 

 

妊孕性温存のため卵巣を凍結し、原疾患の治療が終わった後に融解・移植し妊娠出産に至った症例はこれまでに100例を超えています。

そのほとんどは緩慢凍結法によるものです。我々はその理由を探るべく凍結保護剤に着目して研究を行いました。

【研究内容】

ウシ卵巣を緩慢凍結法、ガラス化凍結法(2種類)で凍結・融解し卵巣組織の中に残留している

凍結保護剤(DMSO,EG)の量を測定比較しました。

 

結果

緩慢凍結法では融解後の組織内に凍結保護剤はほとんど残留していなかったのに対し、

ガラス化凍結法ではかなりの量で残留していることが明らかになりました。

使用している凍結保護剤の濃度と融解時間の差がこの結果に繋がったと考えられます。

 

今回の研究で明らかになった凍結・融解卵巣組織内の残留凍結保護剤ですが、

実際に体内でどのような影響を及ぼすのかはっきりとは分かっておりません。

しかしながら、移植後長期間に渡り体内にあることを考えると凍結保護剤は可能な限り除かれているべきであると我々は考えております。

現時点では緩慢凍結法が実績・安全性の面からも優れていると考えられます。

 

当院では、日本卵巣組織凍結保存センター(HOPE)を開設し、緩慢凍結法による卵巣凍結を実施しております。

妊孕性温存にて悩まれている方は是非ご連絡頂きたいと思います。

 

高輪培養部

小幡隆一郎


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