コラム 2019.04.16
過去の病気と思われがちな梅毒ですが、2013年ころから患者数が急激に増えています。
今回は梅毒についてお話させていただきます。
梅毒は感染症法において全数報告対象(5類感染症)で、診断した医師は保健所に届け出ることになっています。東京都の患者報告数をみてみると、2011年から増加に転じ、2018年の患者報告数は 1775人となっています。男性では20代から50代、女性では20代から40代で増加しており、若い女性(10代・20代)では男性を上回る件数となっています。
病原体は梅毒トレポネーマ(Treponema Pallidum)という細菌です。感染すると全身に様々な症状がでます。主な感染経路は感染部位(陰部・口唇部・口腔内・肛門等)と粘膜や皮膚の直接の接触です。感染者との性行為、疑似性行為、稀に食器・衣類・カミソリなどを介して感染します。コンドームの使用は有用ですが、完全に予防することはきません。感染すると1から13週の潜伏期間を経て発症します。妊娠している人が感染すると胎盤を通して胎児に感染します。母体が無治療の場合、40%は流産や死産となり、生まれた場合も障害がみられます(先天性梅毒)。
主な症状は次のようになっています。
第一期(感染後3週間から3ヶ月)
感染部位にしこり(硬性下疳:無痛性の硬結で膿を出す)ができ、無治療でも数週間で軽快する。
第二期(3ヶ月から3年)
全身のリンパ節が腫れる。発熱、倦怠感、関節痛。特徴的な全身性発疹(バラ疹)が現れる。無治療でも1ヶ月ほどで軽快する。
第三期(3年から10年)
ゴム腫(皮膚や筋肉、骨などに非特異的肉芽腫)ができる。
第四期(10年以降)
神経梅毒(進行性麻痺・脊椎瘻)。心臓血管系・中枢神経系が侵され、死に至ることもある。
早期先天性梅毒(乳幼児期に発症)
梅毒しん、骨軟骨炎、鼻閉、肝脾種
晩期先天性梅毒(学童期に発症)
ハッチンソン3兆候(実質性角膜炎、内耳性難聴、ハッチンソン歯)、ゴム腫
*現在では早期に発見・治療を開始することが多く、第三期以降にまで進行することは稀です。
*梅毒は“偽装の達人”とも呼ばれ、多くは感染しても症状がありません。
血液検査を受けなければ感染がわかりません。
感染しているかは血液検査で調べることができます。血液中の抗体を調べる検査で、感染後早くて4週間後から陽性反応が出ます。感染の進行、治療効果の判定に有効です。当クリニックではスクリーニング検査の項目に含まれています。
治療としてはペニシリン系とセフェム系の抗生物質が有効です。第一期で2~4週、第二期で4~8週の内服が一般的です。正しく治療を行えば完治しますが、梅毒は治療しなくても症状が消失する特徴があるため、症状が消えたからと言って自己判断で治療を中止すると完治せず病気が進行します。また、終生免疫ではないので感染を繰り返すことがあり、再感染の予防が大事になってきます。そのためには、パートナーと一緒に検査・治療を行うことが重要です。
感染初期の症状はアトピー皮膚炎などと似ている事から発見が遅れることがあります。治療可能な決して怖い病気ではないので、疑わしい場合は血液検査をしましょう。また、パートナーに無症状のまま感染が広がっている可能性がありますので、必ず一緒に検査を受けてください。
参考資料
国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/syphilis-m/syphilis-iasrd/3456-kj3985.html
東京都福祉保健局
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kansen/syphilis.html
高輪検査部 金子
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