コラム 2019.04.30
男性の生殖には男性ホルモンが欠かせません。
男性ホルモンは、第二次成長で性器の成熟、体毛・恥毛(ちもう)・ひげの発生、変声、射精、性欲の高まり、筋肉・骨格の成徴などを促します。
日常的にも性欲・勃起を促し、精子の成熟にも関係します。
そのため不妊症治療に男性ホルモンは大きく関わってきます。
また、筋肉を大きくし、精神的・肉体的なストレス耐性を上げるともいわれており、
海外などでは男性ホルモンの補充療法はテレビCMをやっているほどです。
男性ホルモンが下がってしまうとLOH症候群といって、勃起障害や、性欲低下、倦怠感、不眠などの症状が現れます。
男性ホルモンは精巣(睾丸)で95%、副腎で5%が作られます。
精巣は男性にしかありませんが、副腎は女性にもあるので、
女性も男性に比べると非常に少ないものの、男性ホルモンは持っていて、性欲などに関わるといわれています。
男性ホルモンはただ精巣で自動的に作られて垂れ流しになっているのではなく、
脳の下垂体という部分から刺激ホルモン(LH)が出て、適切な量に調節されています。
精巣では男性ホルモンとともに、精子も作られています。
やはり精子も同様に下垂体から出る刺激ホルモン(FSH)で調整されています。
男性不妊外来で「勃起が悪くなってきた」、「性欲がわかない」などのお話を聞きます。
もちろん性欲や勃起、精液所見などは、その時の体調や気分、もともとの精巣の機能的な問題なども関わっており、
すべて男性ホルモンがコントロールしているわけではありません。
しかしながら30歳代には男性ホルモンの低下が始まると言われ、低い方もたびたび見かけます。
では海外のように男性ホルモンを薬で摂取すればいいのでは?と思うかもしれませんが、
男性ホルモンを外から取り入れてしまうと、「もう十分だから精巣が休んでもいいと」判断し、結果前述のFSHとLHが低下してしまいます。
下がるのがLHだけならいいのですが、FSHも一緒に下がってしまい、精子を作る機能も一緒に休んでしまいます。
これから子供を欲しいと思っている方は、自分の精巣をたくさん動かして男性ホルモン・精子を作ることをお勧めします。
日常生活としては、筋肉トレーニング、有酸素運動どちらもよいとされています。
大きい筋肉を鍛える方が効率もいいので、お尻や太ももの運動を取り入れましょう。
しかしやりすぎは逆にホルモン値が下がってしまうこともあるので、無理のない範囲で行ってください。
食事はバランスのいい食事が前提ですが、
ニンニクや、オクラ、レバーなど、ビタミンD,E、亜鉛を含むものを少し多めにとることをお勧めします。
一度にたくさん摂るよりも、日々バランスよく摂取し、食事を楽しむようにしてください。
また、十分な睡眠、趣味の活動、友人と楽しい時間を過ごすなどの刺激が良いとされています。
内服薬で精巣の刺激を増やし、精子とともに男性ホルモンを増やす治療もあります。
奥様のタイミングや治療内容によって治療計画に組み込んでいきますので、一度男性外来にお越しいただき、ご相談下さい。
男性は生まれる前から死ぬまで、男性ホルモンとの付き合いは切っても切れません。
日本はまだまだ浸透していませんが、世界的に性ホルモンとうまく付き合うことは、性的なことや、子供を作ることだけでなく、健康で活発な生活を送る大きな要素の一つだとされています。
当院の男性外来医師は生殖だけでなく、性機能の専門医でもありますので不妊治療をアシストできるようにバランスを取りながら、最良の治療を探していきたいと思っております。
医師部 泌尿器科 田井 俊宏
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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