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医療コラム

コラム 2019.05.14

笑いと不妊について

 

皆さんはNK(ナチュラル・キラー)細胞という言葉をご存知でしょうか?

今回はNK細胞と不妊についてお話ししたいと思います。

NK(natural killer)細胞とは全身をパトロールしながら、

がん細胞やウイルス感染細胞などを見つけ次第、攻撃するリンパ球です。

生まれながらに備わっているからだの防衛機構で、自然免疫に重要な役割を担うと考えられています。

NK細胞はもともと、からだの中にできた「がん細胞」やウイルス感染した細胞を破壊する細胞ですが、

この細胞の力が強すぎると赤ちゃんを攻撃してしまい、

着床不全や流産の原因になると言われています。

(齋藤滋ら本邦における不育症のリスク因子とその予後に関する研究 厚生労働省 不育症研究班 2010年・福井淳史らNKp46と生殖 2015年30巻p.1-6)

 

1954年に初めて米国の研究者が「ストレスと不育症」の密接な関係を発表して以来、

ストレスの低下が不育症治療の成功率を有意に上昇したとする臨床研究が複数の国から報告されています。

また、1995年に動物実験においても、

精神的なストレスにより免疫異常が発生して流産率が増加することが言われており、

厚生労働省不育症研究班の報告でも精神的なサポートが流産に有効であると報告しています。

(東京大学医学部附属病院 女性診療・産科 藤井知行 不育症女性のメンタルヘルスと免疫機能調整異常についての研究)

 

伊丹仁朗(柴田病院難治疾患研究部)らの研究によると、

吉本興業の「なんばグランド花月」で20〜62歳の方を対象に、漫才・吉本新喜劇を鑑賞してもらい、

その後に採血をおこない血中のNK細胞や免疫システムのバランス力を調べました。

その結果、NK細胞と免疫システムのバランス力ともに基準値よりも低い人は数値が上昇し、

はじめから高い人は正常値あるいはその方向へと低下するという傾向が報告されています。

(伊丹仁朗、昇幹夫、手嶋秀毅、笑いと免疫能心身医学、1994年10月・第34巻・第7号)

 

不妊治療をしている方の背景として、

身体的・精神的・社会的なストレスがかかりやすい環境にあり、

上記のようにストレスが免疫異常・ホルモンバランス異常の原因となり、着床障害や流産の原因となることがあります。

『ストレスを溜めないようにする』ことは容易に改善できることではありませんが、

『思いっきり笑う』ことはストレス発散になります。

笑うことでNK細胞が正常値に近づき、免疫異常が改善されることにより、着床不全や流産の予防へと近づきます。

治療は薬を使って治すだけでなく、普段の生活環境の改善で治癒に向かうこともあります。

今日から『笑顔でいる』ことを心掛け、ストレス発散にお笑いなどを観て、

『思いっきり笑ってみる』のはいかがでしょうか?

 

参考資料

伊丹仁朗、昇幹夫、手嶋秀毅、笑いと免疫能

心身医学、1994年10月・第34巻・第7号

東京大学医学部附属病院 女性診療・産科 藤井知行

不育症女性のメンタルヘルスと免疫機能調整異常についての研究

齋藤滋ら本邦における不育症のリスク因子とその予後に関する研究

厚生労働省 不育症研究班 2010年

福井淳史らNKp46と生殖

2015年30巻p.1-6

高輪看護師  木内


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