学会報告 2019.07.09
当院ではJISART(日本生殖補助医療標準化機関)という不妊治療を専門とするクリニックによって結成された団体に所属しております。
JISARTは子どもが欲しいと願うご夫婦に安心して、満足できる医療を受けていただくことを目的として活動しており、現在、全国30施設が加盟しています。
年に1度行われれるJISARTシンポジウムには全国のクリニックが参加します。当院からも毎年クリニックのスタッフが数名参加しております。
今回7月6~7日に都市センターホテル(新宿)で行われたシンポジウムには
当院の生殖心理カウンセラーの菅谷が心理教育セミナーの司会及びにシンポジウムのワークショップのカウンセラーとして参加致しましたのでシンポジウムの報告書を掲載いたします。
2019年7月6日~7日
都市センターホテル
1日半研修を受けさせていただきましてありがとうございました。
今年の心理教育セミナーの企画と司会は私が担当しました。シンポジウムのワークショップのカウンセラーパートも私が仰せつかりましたので、それらの報告をさせていただきます。
特別養子縁組をテーマとし、東京都児童相談所とNPO法人フローレンスが来てくださったのに加え、神谷レディースクリニックの臨床心理士西村さんが特別養子縁組の体験談をお話してくださいました。特別養子縁組に関わる三者の立場が揃い踏み、というめったにない状況が実現し、非常に良い会になりました。
・家庭で暮らせない子ども、東京都管轄で4000人
・特別養子縁組は、従来の6歳から15歳に年齢が引き上げらることになった。法律の施行が2020年4月である。
・里親は養育費が支給される。特別養子縁組は、家裁の審判が下りるまで養育費が支給される。
・特別養子を迎えることができる家庭の収入は生活保護程度ならOKであるが、ここ数年は厳しくなり、源泉徴収票など公的な証明書の提出が義務付けられた。
・東京都では、養親の年齢制限を撤廃した。しかし、子どもが20歳になったときに現実的にどうかということも重視している。
・実際に養護施設から家庭に子どもを迎える際、保育士との別れも子どもにとってはつらいもの。
・虐待を受けていた子どもの途中養育は、養親に対する試し行動(今までできていたことができなくなったり、養親の愛情を試すような行動)が激しい場合が多い。
・望まない妊娠をしたという相談から実際の特別養子縁組につながるケースは、相談全体の1%くらい。
・子どもを手放したい産みの親は、ほぼ経済的に困窮している。
・産みの親が産後子どもを手放すまでは、産みの親の好きなようにしてよい。だっこしても初乳をあげてもOK。1週間でも子どもを愛した納得や満足が必要。このことは養親が子供に語り継いでいく。
・昨年、特別養子縁組あっせん法が成立してから、NPOから行政に犯歴照会ができるようになった。児童ポルノ法に抵触したことがある者は縁組できないことになる。
・告知の1例「あなたには別に産んでくれたお母さんがいてね、あなたが産まれる日をどんなに楽しみにしていたか。あなたは小さくてかわいくてね・・・。」
・今後の課題は、いかに早く特別養子縁組を検討してもらうかということ。不妊治療を終結させてからでは遅いケースが多い。
・3歳の女児を迎えたが、重度の虐待を受けていたため、体重が10㌔しかなかった。栄養も十分でなく、愛着の問題もあり、3歳としての発達を遂げていなかった。
・2か月間は試し行動が続き、大変だった。
・アメリカでは養子縁組が整いにくくなっている。なぜなら、覚せい剤を使用していた産みの親が多く、生まれながらにして離脱症状を持つ子どもが多くなってきたためである。
・生後すぐの特別養子縁組では、愛着障害は出ないことが多い。
JISART非配偶者間体外受精も、経済的な公的証明の提出や犯歴の紹介ができると良い、とJISRT倫理委員の上野先生と話しました。
ワークショップ「患者さまへどのように情報提供をするか?」
結論は「私たちはあなたの大変さを理解しています」ということにしました。
大変さを理解するためには、インプットとアウトプットが必要である、ここから話を膨らませていきました。
学会と異なり、JISARTで発表するのはとても緊張感が強く重荷でしたが、何とか楽しく終えることができました。
学ぶ機会をいただきありがとうございました。
菅谷典恵
JISART HP https://jisart.jp/
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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