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医療コラム

学会報告 2019.08.13

卵巣組織凍結における凍結方法と新たな研究について


卵巣組織凍結における凍結方法と新たな研究について

先日8月1-2日に、第37回日本受精着床学会が東京・新宿で開催されました。

当院からは合計10名のスタッフが参加し、様々な演題を口頭発表して参りました。

 

こうした学術活動を通じて、日々の治療の結果を振返り、その有効性を確認するとともに、新たな知見や技術の情報を得て、さらなるレベルアップを図って参りたいと思っています。

 

今回は、最近特に注目を集めている若年性がん患者さんの妊孕性温存に関する演題をご紹介したいと思います。

 

妊孕性温存についてはこちらから

妊孕性温存

 

卵巣組織凍結による妊孕性温存について


卵巣組織凍結による妊孕性温存を通じて、現在世界では欧州を中心として、130名以上の赤ちゃんが誕生しています。

日本でも実施はされているものの、現時点では臨床研究段階の手法として位置付けられており、

現在おおよそ300例程実施されていますが、開始してから期間が短いことやいくつかの課題があり、まだ生児獲得の報告がありません。

 

欧州での実績と日本での成績の差は、何によるのか。

一つの要素として考えられているのが、凍結法の違いです。

現在、凍結保存技術としては、大きく二つの方法があり、ガラス化凍結法緩慢凍結法です。

 

欧州では、卵子や受精卵や精子についてはガラス化凍結法を実施しており、卵巣組織については、緩慢凍結法を採用しています。

一方で日本では、すべてガラス化凍結法で実施している施設が多いのが実情です。

 

現時点での両方の手法をまとめると以下のような比較が出来ます。

 

緩慢凍結法 ガラス化凍結法
凍結にかかる時間 長い 短い
凍結にかかる医療機関のコスト 高い 安い
凍結に要する技術 専門的な技術必要 不明
安全性や出産報告 130名の出産 不明

 

現時点では、世界の多くの施設は緩慢凍結法を採用しており、当院でもそれにならい、緩慢凍結法を習得し実施しております。

今後コストダウン等を考えた際には、ガラス化法の開発が望まれている一面もありますが、

現時点ではまだ安全性や出産に至るようにするための技術が確立されていないと考えられています。

 

当院ではこれまで、ガラス化凍結法を実施する場合、融解した卵巣組織に凍結保護剤(簡単に言えば薬のようなもの)が高濃度に残ってしまっており、

それを人体に戻すことが懸念されることを論文にて報告しています。

(卵子や受精卵・精子の場合には、凍結保護剤は融解した際に、きれいになくなっており、移植後に問題がないことが確認されています)

 

詳細は以下から確認いただけます。

https://ivf-kyono.com/column/post-1404/

 

今回の受精着床学会では、このガラス化凍結法に関しての新たな試みが発表されておりましたので、一部を紹介したいと思います。

基礎研究であり、かなり難しい内容であるため、

できるだけ簡単に要約したいと思います。

 

「世界体外受精会議記念賞 候補演題(基礎)」

演題名:卵巣構造に着目した新たなガラス化凍結保存法の開発

 

この研究は広島大学とセントマザー産婦人科医院にて行われた基礎研究です。

 

演者の先生がいうには、現時点での卵巣組織凍結後の融解移植後に生存している卵胞は、

原子卵胞のみであり、その原子卵胞の卵胞発育能も低いという点に課題があるとのこと。

 

原因として、考えられるのはガラス化凍結時に卵巣構造の変化が考えられ、具体的な観察の結果、

「ガラス化凍結過程のマウス卵巣を組織学的に観察した結果、高浸透圧のガラス化液に浸漬することで、卵胞と卵巣皮質間と二次卵胞内の卵と顆粒膜細胞間に剥離が生じていた」

と報告しています。

 

この剥離の原因には、各細胞や組織間のコラーゲン層における細胞収縮速度の違いが関係していると仮定し、

コラゲナーゼという特殊な前処理を行ったところ、

剥離が起こらなかった=卵巣組織は正常に機能した

という報告がされています。

 

この報告は非常に興味深い報告でありますが、今後はヒトで同様の結果が得られるかの追加の報告が待たれます。

現時点では、従来通りのガラス化法では融解移植後の機能が低い場合が多いこと、世界的に見れば、安全であり効果が高いのはやはり緩慢凍結法であると言えるのではないでしょうか。

 

次は、当院から発表した妊孕性温存における取り組みについて紹介させていただきます。

https://ivf-kyono.com/column/post-1906

 


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