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医療コラム

コラム 2019.11.21

培養液について

体外受精や顕微授精後の受精卵を培養部ではどのように培養しているかご存知ですか?

今回は受精卵を培養するために使用する「培養液(メディウム)」について、簡単にご紹介したいと思います。

まず培養液とは、どのような成分が含まれているのでしょうか。からだの中で起こる受精の場は“卵管(卵巣から子宮までの通り道)”です。培養液は卵子と精子が受精し、受精卵となってから着床に至るまでに必要な栄養素を含まねばなりません。つまり、受精の場である卵管に存在していると考えられている栄養素が含まれています。卵管液を模倣しているのが培養液と言えます。

次に培養液の種類についてですが、培養液は大きく分けてシーケンシャルメディウムとシングルステップメディウムとの2つがあります。

シーケンシャルとは英語で”sequential”、つまり「引き続いて」という意味です。したがって、シーケンシャルメディウムとは受精卵を6日間培養するうち、最初の3日間とその後の3日間で異なる2種類の培養液を引き継ぐ方法となっております。

受精卵は1つの細胞から2つ、3つ、4つ、5つ…と分割していきます。その分割した細胞は割球と呼ばれ、その受精卵は初期胚または分割期胚と言います(図1)。また、そこからさらに細胞が分裂していき、胎児と胎盤になる細胞がそれぞれ分かれるようになると、その受精卵は胚盤胞と呼ばれます(図2)。

この際、初期胚ときに必要な栄養素と、割球から胚盤胞に至るまでに必要な栄養素は異なることが知られています。したがって、それぞれの段階で異なる培養液を使用するのがシーケンシャルメディウムの特徴です。受精から3日目に栄養素の異なる培養液に交換します。

次に、シングルステップメディウムですが、これは同じ培養液を6日間、培養液の交換を行わずに使用する方法です。シーケンシャルメディウムの理論から言うと、これでは胚盤胞に至るために必要な栄養素が不足するように思えます。しかし、このシングルステップメディウムの理論は、受精卵は分裂をしていく過程で、自身に必要な栄養素を自ら選んで吸収し、1つの培養液に十分な割球、胚盤胞両方の栄養素を入れることで、受精卵が選択的に栄養素を取り入れていくと考えられているものです。つまり、培養液を2種類用意せず1種類で済むのがシングルステップメディウムの特徴です。

現在、当院では、培養液の交換の必要がないシングルステップメディウムを使用しております。理由として、当院では全症例にタイムラプスシステムを導入しており、受精から胚盤胞までEmbryoScope+という培養器に入れながら受精卵の観察を行っているためです。

タイムラプスシステムとは、培養器に入れながら10分ごとに受精卵の様子を撮影するシステムのことで、培養器から受精卵を外に出さずに観察できる利点があります。からだの中で起こる受精の場では、受精卵は外の空気や光には一切触れずに成長していくため、体外受精した際に触れる空気や光は受精卵にとってストレスとなることが分かっています。より良い環境での受精卵の培養ができるため、培養液の交換のいらないシングルステップメディウムを使用しております。

世界中の生殖補助医療を行っている施設では、一般的に市販されている培養液を使用しています。現在、10社程のメーカーが培養液を製造・販売しており、それぞれ培養液に含まれる成分が少しずつ異なります。実は現在市販されている培養液は、長い研究の歴史の末にできたものであり、今もなお、さらに良い培養液の開発が進められています。たとえば、酸化ストレスを軽減させる成分や、細胞の成長を促す因子を含んだ培養液などが開発されています。また、実際に当院では、市販されている複数の培養液の検討を行い、当院の培養環境に合う培養液をいくつか選定し、みなさまからお預かりした受精卵がより良く発育するよう、培養液の選定に力を入れております。

培養液の紹介は以上となります。いかがでしたでしょうか。

培養部では培養液以外にも受精卵を培養するのに適した環境づくりや、最先端の技術の情報をしっかりとキャッチし、より良い医療を提供できるよう日々努めております。また、培養士の業務について、詳しくは「胚培養士の一日」( https://ivf-kyono.jp/column/2019/09/post-176.php )のコラムをご参照いただければと思います。

図1. 初期胚         図2. 胚盤胞

 

仙台培養部 宮本若葉

 

 


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