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医療コラム

コラム 2020.02.11

妊娠に向けて知っておきたい感染症についての基礎知識

新型肺炎の話題が取り沙汰される昨今ですが今回は妊活中の方に知っておいて頂きたい感染症の話と季節性に流行するインフルエンザなどの疾患についてお話します。

 

秋から冬にかけ多くの患者さんから「ワクチンを打ってよいのか」と質問されます。治療との兼ね合いや内服中の薬との飲み合わせを心配されます。

 

インフルエンザワクチンの接種は、不妊治療に用いる薬との飲み合わせの悪さもなく、母体と胎児にも影響は少なく妊活中・妊娠中のどちらでも接種することができるとされています。

 

ですがインフルエンザはワクチンを打っていても防ぎきれません。ワクチンを打つことも重要な予防法ですが、うがいや手洗いの徹底といった生活習慣を整える事も重要です。他にマスクの装着、換気の励行、人混みを避ける、しっかり休養を取ることも必要です。

 

発熱があったり体調が優れないときは不要不急の外出を避ける。日常的にこうした基本的な対策を取り続ける事が必要です。極論ですが個人にはこれ以上の対策はありません。新型コロナウイルス肺炎が流行していてもインフルエンザが流行していてもこうした予防の重要性は変わりません。

 

今回は特に妊娠を希望されている方々にとって、重要な感染症と考えられている風疹、麻疹、水疱瘡についてそれぞれ紹介します。

 

【風疹・ふうしん】

風疹は、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症です。症状が出て3〜5日ほどで消えます。はしか(麻疹)に似ていますが、短い期間で治るため三日はしかとも呼ばれています。

20代~40代の女性のおよそ20%程度は風疹の抗体が十分ではないとされています。

 

妊娠初期に風疹に罹患すると、風疹ウイルスが胎児にも感染して、出生児に先天性風疹症候群 と総称される障がいを引き起こすことがあります。

先天性風疹症候群の三大症状は難聴・心疾患・白内障ですが他にも多彩な症状があります。感染症状が現れた状態での妊娠月別の先天性風疹症候群の発生頻度は、妊娠1 カ月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%程度です。

感染していてもまったく症状がみられないこと(15%程度)もあるため、注意が必要です。

 

【麻疹・はしか】

麻疹は免疫のない人が感染者の近くにいた場合、90%以上が感染するといわれ、極めて強い感染力で知られており、空気感染もするためマスクでは感染を防ぐことはできません。

 

妊婦が麻疹にかかると非妊娠女性に比べて重症化しやすいとも言われおり、さらには流早産しやすいとも言われています。具体的には、妊娠中に麻疹罹患した3割が流早産し、しかも90%は母体発疹出現から2週以内に流早産になります。

 

一方、麻疹に罹患した場合、風疹のように先天奇形を生じる率は低いと言われています。

抗体のない母親から生まれた新生児が1・2歳までに罹患すると重症化することが多い事も知られています。

 

【水疱瘡・水ぼうそう】

水ぼうそうは水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる感染です。全身の発疹や発熱、肺炎や細菌感染の合併、髄膜炎や脳炎など様々な症状をおこします。

感染力が強く、麻疹と同じように空気感染することもあります。多くの人が小児期に感染し免疫を持っているとされています。反面、免疫を持っていない大人が感染すると重症化しやすく、髄膜炎や脳炎などを起こした場合、約20%で死亡したり重い後遺症を遺すことがあります。

妊娠8〜20週の初期に水ぼうそうに感染すると、胎児にも感染して先天性水痘症候群を引き起こします。

症状として、子宮内発育遅延、低体重出生、四肢形成不全、帯状疱疹に伴う皮膚瘢痕(はんこん)、小頭症、小眼球症や白内障および網脈絡膜炎ほか眼球の異常や発達障害などがあります。20週以降の母体が感染した場合は胎児の奇形など先天異常はほとんどないとされています。

 

妊娠中に罹患すると胎児への影響を及ぼす代表的な3疾患をあげましたが、これらの唯一の有効な予防法は、ワクチン接種によって免疫を獲得する事です。

妊娠してからでは予防接種を受けることが出来ませんので、当院ではスクリーニング検査でそれぞれの抗体価を確認しています。

 

検査結果で抗体価が低いと言われた方はワクチン接種をご検討下さい。

周囲の方が感染すると、妊婦に十分な免疫がない限り感染を防ぐことは容易ではありません。その為女性だけでなく男性もワクチン接種の必要があります。

ワクチンを接種した場合、2ヶ月は避妊期間として空ける必要があります。

 

体外受精を検討されている方の中には、ご相談いただいた上で、ワクチン接種の後の避妊期間中に採卵および胚凍結を実施して、避妊期間が終了したのちに胚移植をするというスケジュールを立てるというようなこともありました。

正しい知識をもって、一緒に妊活に取り組んでいきましょう。

高輪看護師 沼田

参考WEB

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/518-measles.html

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index_00001.html

https://www.niid.go.jp/niid/ja/vaccine-j/249-vaccine/585-atpcs001.html

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/429-crs-intro.html

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/smph/kodomo/shussan/kenkou/boshikansen.html

岡山医学会雑誌 第120巻 August 2008 pp219~221

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html


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