コラム 2020.02.18
みなさまは当院で行っている精液検査の種類についてご存じでしょうか。当院では精液の液量や濃度、運動性などを測定する一般的な精液検査のほかに、奇形率が高いと判断された場合に精子を染色して正常形態の割合を算出するクルーガー検査、精子のDNA損傷の有無を判定するHalo sperm testなどの検査項目があります。Halo sperm testの詳細については、以前のコラムに掲載がございますので、ぜひご覧いただければと思います。
http://203.183.146.49/column/post-1977/
今回はこちらのコラムでも触れられております、酸化ストレスについてご紹介させていただきます。
Asian J Androl. 2019 Jul 23. doi: 10.4103/aja.aja_75_19. [Epub ahead of print]
Correlation of oxidation reduction potential and total motile sperm count: its utility in the evaluation of male fertility potential.
こちらは、男性不妊の患者と一般男性の精液を調査した結果、男性不妊の患者で酸化還元電位の値や精子のDNAフラグメンテ―ションが高いことを示した研究です。
そもそも酸化ストレスって何?酸化還元電位ってなんだか難しそう…と思われる方がいらっしゃるかもしれませんので、簡単に説明をさせていただきます。身体が活性酸素などにより酸化=サビてしまうことにより体内の細胞を傷つけてしまうことを酸化ストレスと言います。また、酸化やそれを元に戻そうとする還元の強さを示したものを酸化還元電位といいます。
酸化ストレスは男性不妊の主な原因の一つとして考えられており、酸化を弱めたり、除去したりする抗酸化物質の不足を特徴とします。過剰な酸化ストレスは、分子レベルで脂質やタンパク質、DNAへの損傷を引き起こし、結果的に受精率の低下や着床の失敗などにつながる可能性があるとされています。活性酸素はごく自然に生体内にあるもので、精子の成熟に不可欠な存在です。しかし、これが過剰に産生されるとヒトの精液中の抗酸化物質の濃度を上回り、不妊の原因となることがあります。そのため、酸化ストレス値を検出し、それをもとに適切な治療を進めることが推奨されているのです。
当院では、酸化ストレスとDNA損傷検査を新たに導入致しました。全ての患者様を対象にした検査となっているため、よりきめ細やかな治療のご提案をすることが可能となります。酸化ストレスは、精索静脈瘤や飲酒や喫煙、肥満などにより増加することが明らかとなっていますので、精索静脈瘤手術であったり、生活習慣の見直しなども妊娠への第一歩となります。
専門的なテーマを紹介させていただきましたが、忘れてはいけないのは、妊娠に必要なのは、健康な卵子と健康な精子であることです。特に卵子に染色体異常(年齢の影響大)がないことが重要であり、男性側の治療が仮に長期間にわたる場合、その間に女性の卵子が老化してしまうこともあり得ます。そのため、男性に不妊原因があると言われている場合でも、当院では夫婦での診察を徹底しています。
患者さんの身体の状況、知識や治療の方向性、いろいろなものを総合的に判断して、進めていくことが妊娠への近道になると当院では考えております。
ご不明点があればいつでも医師やスタッフまでお尋ねください。
高輪培養部 岡庭瑞紀
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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