コラム 2020.04.20
令和 2年 4月 1日 、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する日本生殖医学会からの声明が出されました。日本国内でもCOVID‐19感染が拡大し、感染ルートが不明な感染者は今もなお増加しております。COVID-19が妊娠、特に妊娠初期の胎児に及ぼす影響は明らかになっておらず、母体から胎児への感染の可能性は不明です。COVID-19 感染の重症化の可能性も指摘されていることや、感染時に使用される治療薬も妊婦に禁忌の薬剤による治療が試行されていることから、不妊治療による妊娠が成立したあとのCOVID-19感染への対応に苦慮することが予想されます。したがって、当院でも原則、高齢者の挙児希望患者が多いこと(体外受精を受ける患者の平均年齢40歳~41歳がピーク)もあり、卵巣刺激・採卵・全胚凍結を原則とし、妊娠に関しては延期を選択肢として患者様に提示させていただくことになりました。患者さんには、治療が一時的に保留となり、今後の治療に対しご心配をおかけしていると思います。私たちも、治療の延期を伝えなければならない状況とこの見えない敵に対し、日々苦悩しております。
アメリカ生殖医学会 (ASRM)は患者さんへのメッセージやFAQで、COVID-19パンデミック時の対処として、患者さんへタイムリーで実用的な情報を提供しています。例えば、この期間を禁煙や減量など健康の改善する機会に当てる、ソーシャルメディアやその他のニュースの使用を制限し就寝の1時間以上前に電子機器の使用を停止する、リラクゼーションまたは*マインドフルネスでストレスや不安を取り除き、心を休め睡眠を改善する、サポートネットワークやオンラインで他の人とのつながりを保ち、孤立感を減らす、などを提言しています。
ASRMが伝えているように、この期間は自分を育み、散歩、料理、オンラインでの授業、音楽、アートの作成など、喜びをもたらすこと、また休息時間を作り、可能であれば新鮮な空気を取り入れ、ポジティブなことに集中し笑顔になれるものを探してみてください。すぐには心を切り替えることは難しいと思いますが、皆さんも、なるべくストレスを溜めないように、これらの提言を参考にされてはいかがでしょうか。
そして最後に、これらのことに共通していることは、『Don’t Lose Hope』のメッセージだと思います。私たちも、今後の不妊治療とこの見えない敵に対し、Don’t Lose Hopeの気持ちを持ち、COVID-19感染に打ち勝ち、安心して患者さんに治療を受けていただける日に向けて、今後も頑張っていきたいと思います。
*マインドフルネス…1970年代よりアメリカを中心に科学的・医学的な研究のもと効果が実証されており、マインドフルネス瞑想法は、ストレスや不安を取り除き、心を休め睡眠を改善すると考えられている。日本マインドフルネス学会では“今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、 評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること”と定義しています。
Apr 06, 2020 Author: ASRM and Mental Health Professional Group (MHPG) Contributed by Janet Jaffe,Ph.D.; Kristen Chambliss, Ph.D.; Alison Fagan, Ph.D.; Jennifer Riley, MSW, LSW; and Deb Levy, MA, LPC. https://www.asrm.org/
日本マインドフルネス学会 https://mindfulness.jp.net/
医師部 斎藤幸代
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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