コラム 2020.08.25
4月1日に施行された「改正健康増進法」。「望まない受動喫煙を防ぐ」ために近日では屋内での喫煙が禁止になり、
今ではほとんどの飲食店でたばこの煙をくぐらせる人を見かけることはなくなりました。
喫煙者の方の肩身が狭くなるばかりですが、そもそも喫煙の何が健康に害を与えるのでしょうか。当院の問診票にも”喫煙歴の有無”をお答えいただく項目がありますが、喫煙と妊娠にはどのような関係があるのでしょうか。
■たばこの基礎知識
植物であるたばこの葉を乾燥・加工して、紙巻たばこは作られています。火をつけて吸っていると燃焼しますが
不完全燃焼でもあるため様々な燃えかすが生成されます。この燃えかすの中には発がん性が認められている、発がん物質も多くあり、実際にたばこには約50種類もの発がん物質が含まれているとも言われます。
自分で吸う煙を主流煙、たばこの先から立ち上がる煙を副流煙といいますが
じつは、このふたつの煙に含まれる成分は同じではないのです。ご存知だったでしょうか?
燃焼の状況などが異なるため成分は同じではなく、むしろ副流煙のほうが有害物質を多く含んでいるとも言われます。
喫煙者が吸い込む煙と同じくらい周囲の人が吸い込む煙は有害であるという事がわかります。
■たばこの三大有害物質
・ニコチン
依存症にさせる作用があります。血管を収縮させ、血液の流れを悪くさせる作用もあり、動脈硬化を促進させます。子宮や胎盤への血液量が減少します。
・タール
たばこのヤニの成分。発がん性物質や発がんを促進させる物質が数十種類以上含まれています。
・一酸化炭素
酸素を運ぶ機能を阻害し、酸素不足を引き起こします、
動脈硬化を促進させます。
そのほかにも有害物質が250種類、発がん性物質が50種類以上あるといわれています。
■たばこと不妊症のメカニズム
・卵子と精子の質の低下
有害物質が血流を阻害し、血中FSH(卵巣刺激ホルモン)血が高くなり卵巣機能を低下させます。
ニコチンなどの物質が女性ホルモンの分泌を抑制し、卵子の遺伝子異常を引き起こしてしまうのです。
その結果、卵子は老化し、受精率や着床率に悪影響を及ぼします。
また男性の場合でも、精子濃度や精子運動率が低下してしまいます。
妊娠する確率の低下に大きくかかわっていることがわかります。
先述したように、副流煙による、いわゆる受動喫煙でもこうした悪影響が考えられます。
■加熱式たばこなら大丈夫?
最近、煙が出ない新しいタイプのたばこが登場しています。
その一つが加熱式たばこです。たばこの葉を電気で加熱して蒸気を発生させ、ニコチンを吸い込むものです。
中には発がん性物質や有害成分物質は紙巻きたばこより少なく、
たばこ関連疾患のリスクを減らすとの研究論文を出しているところもありますが、
米国ではたばこの加熱式フィルターから加熱時に有害物質が発生していることが報告されています。
喫煙者の方にとって、禁煙することは大変お辛いことであると思いますが、どちらか一方が喫煙者であれば、その隣にいる大切なパートナーもまた受動喫煙者として体内に影響を及ぼしてしまう可能性があります。
まさに、百害あって一利なし、というものです。
不妊治療は、不妊の原因がはっきりしないことも少なくない中で、1%でも確率を高めようと、患者さまも医療関係者も全力で取り組んでいます。「禁煙」も立派な不妊治療です。
今回のコラムがカップルの未来のためにも、禁煙に向けて前向きに取り組むきっかけに
ほんの少しでもなれたら幸いです。
参考文献:喫煙者本人の健康影響
e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-02-002.html
高輪受付部 山本遥
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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