コラム 2020.08.29
初めて不妊治療のクリニックを受診される方は慣れない環境、難しい言葉などで困惑することも多いのではないかと思います。
妊娠しにくい原因を知るため、検査からご希望される方が多いですが、検査も色々あり、それぞれ適した時期があります。その検査の特徴や時期についてご説明したいと思います。
(月経中)
→月経基礎値(ホルモン採血):これによって卵巣の機能やホルモン異常による排卵障害などがわかります。
→超音波:卵巣嚢腫や子宮筋腫などの病変、形態の異常がないか診断します。卵胞の数を観察することによって卵巣の機能を評価することが出来ます。
(月経が終わってから排卵までの間)
→子宮卵管造影:子宮内に挿入したカテーテルから造影剤を流しながらレントゲン撮影をし、卵管の通過性や子宮の形態を観察します。
この検査をするためには事前にクラミジア感染がないことと、甲状腺機能が正常で造影剤を安全に使用できるかどうかを確認しておく必要があります。また、この検査は妊娠している可能性がある場合は行えません。その周期の月経から性交渉を持っていないことが必要になります。
→卵胞チェック:卵巣の表面に出来てくる卵子を含んだ袋を卵胞と言います。月経時は5mm程度ですが、排卵時期になると20mmくらいまで大きくなります。超音波でこの卵胞のサイズを測ることによって排卵の時期を推測することが出来ます。
→頚管粘液検査:排卵が近い時期になると粘りの強いおりものが多くなってきます。診察時にこのおりものを採取し、色や粘性、量をチェックして排卵が近いかどうかを推測します。
(排卵直前)
→フーナーテスト:これは性交渉を取ってから12時間以内に来院していただき、子宮の入口のおりものを採取し、元気に動いている精子がどれだけいるかを見る検査です。元気に動いている精子が多ければ、ある程度の精子が子宮内に進入できていると推測することが出来ます。この検査によって妊娠する方もいらっしゃいます。
(排卵後)
→排卵確認:排卵が起こってから次の月経までの間に来院していただき、卵巣の超音波で実際に排卵が起き、卵巣に黄体が形成されているかをチェックします。また、採血によってホルモンが排卵後の状態に変化しているかを確認します。
その他事前に検査しておいたほうが良い項目
・AMH(抗ミュラー管ホルモン):卵巣がどれだけ卵子を蓄えているかを見る指標です。年齢が若くてもこの数値が低い場合は早めのステップアップをお勧めする場合があります。
・甲状腺ホルモン:身体的な症状がなくても潜在性に甲状腺の機能が低下していることがあり、不妊症との関係を示唆されています。また、卵管造影検査を受ける前には造影剤を使用する関係で必ずチェックしておく必要があります。
・クラミジア:おりもの検査と採血の2種類があります。クラミジアは卵管の癒着などを起こしてしまうことがありますので、感染が疑われた場合は抗生物質で治療します。
・男性の精液検査、診察:精液検査の所見が悪い場合は自然妊娠が難しいこともありますので、早めの検査をお勧めします。
このように検査の時期はご自身の月経周期によって決まります。いつ初診を受けられるかでその周期に受けられる検査が変わってきます。その周期に受けられない場合は次の周期に検査を受けることになります。また、診察により医師が判断した際にはほかの検査が追加になる場合もあります。これらの検査の結果からそれぞれのカップルに適した治療法を提案致します。
初めて受診されるときは不安もあると思いますが、質問があれば何なりと医師や看護師にお聞きください。
高輪看護部 田中千春
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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