コラム 2020.09.23
卵子凍結には、医学的適応(がんや悪性腫瘍などの疾患で抗がん剤や放射線治療で妊孕性低下が予想される場合)と社会的適応があります。今回は社会的卵子凍結についてお話しさせていただきます。
社会的卵子凍結とは健康な女性が、将来の妊娠に備えて年齢が若いうちに質の良い卵子を凍結保存することです。出産を希望する女性がさまざまな事情により必ずしも若いうちに出産できるとは限りません。近年、女性の社会進出が進み晩婚化の傾向が顕著になっています。
・仕事に邁進し妊娠適齢期を過ぎてしまった
・現在は妊娠の予定はないが、将来出会うパートナーの為にできることをやっておきたい。
このように考える女性の方々もいらっしゃるのではないでしょうか。
年齢を重ねることによって妊娠や出産が難しくなるのは「卵子の質の老化」が大きく関わっています。
①数の減少
卵子の元になる原始卵胞は母親のお腹の中にいる胎児期につくられ、誕生後新たにつくられることはありません。胎児期の頃は、約700万個ありますが誕生時には100~200万個に減り、初経の頃には30万個にまで減少します。その後も徐々に減っていき37~38歳頃には2~3万個となり、50歳頃にはほぼなくなり閉経を迎えます。
②質の低下
妊孕性は30歳を過ぎる頃から低下していきますが、30代前半は下がりが緩やかで37.5歳から急降下します。
一方精子の元になる精祖細胞は一生存在するため、精子は毎日新たにつくられ続け生涯に渡って妊孕性を保てます。胎内でできた原始卵胞が減り続け、最後には無くなってしまう卵子とは対照的です。
凍結保存と聞くと「そんなことをして大丈夫なの?」と感じる方もいらっしゃると思います。融解後の卵子の生存率は約90%です。マイナス196℃の液体窒素の中では卵子の生命活動がほぼ停止するので、半永久的に保存することが可能です。
すぐに始められる卵子を守る方法としては、血流アップです。骨盤内の血流を良くすることは良い卵子を育み、妊娠しやすい体をつくる基本です。血流を悪くする原因としては、①年齢②筋肉量の低下③バランスの悪い食生活④冷え⑤慢性的な精神的ストレス⑥喫煙⑦貧血⑧肥満などがあります。上記に該当する方は
ことをポイントに体質改善を心がけましょう。
妊娠・出産には卵子の老化という厳格なタイムリミットがあります。卵子凍結という選択肢があるということをお考えいただく機会になればと思います。
京野アートクリニック仙台 看護部 三浦萌子
参考書籍
・卵子の凍結保存 妊活法 京野廣一
・30代までに絶対知っておきたい卵子の話 金谷美加
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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