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医療コラム

コラム 2022.06.03

凍結物の長期保管体制について

国土技術研究センターの記載によれば、

「日本の国土の面積は全世界のたった0.28%しかありません。しかし、全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の20.5%が日本で起こり、全世界の活火山の7.0%が日本にあります。また、全世界の災害で受けた被害金額の11.9%が日本の被害金額となっています。このように、日本は世界でも災害の割合が高い国です。」

とされています。

 

近年、トロントやクリーブランドなどからも報じられましたが、凍結タンクにまつわる事故の報告が相次いでいます。

凍結保存タンクに万が一のことがあると、何十、何百もの患者さんの凍結物に対して、

甚大な影響が出てしまう可能性もあり、安全な凍結保存体制はより一層重要さを増しています。

 

日本には数多くの不妊治療施設がありますが、現在、どのような状況なのでしょうか。

最近の調査や研究から紹介したいと思います。

 

1.本邦における妊孕性温存療法に使用する凍結保存タンク管理の実施状況調査

(厚生労働科学研究補助金(がん政策研究事業)研究班(20EA1004))

 

この調査では、622施設を対象にアンケートを取り、回答が得られた352施設の保管状況を調査しています。

 

Q1.凍結タンク内の液体窒素の残量管理

 

液体窒素が満タンの状態から枯渇するまでには数ヶ月かかりますが、

万が一タンクの不具合などが発生した場合には1日と持たず、液体窒素がなくなってしまうことも考えられます。その場合、タンク内の凍結保存物は融解されてしまうリスクがあります。そのため、凍結タンク内の液体窒素の残量管理は大変重要で、重量管理の導入が増えてきているように思います。

Q2.監視頻度

Q3.タンクに警報器がついているか

 

Yes:9.7%

No:90.3%

 

なお、タンクに異常が生じた場合の決めている施設は45.2%に留まった。

 

とされており、事故を想定したタンク管理の必要性や安全指針の作成が必要とこの研究では考察しています。

凍結保存体制一つをとっても、これだけのばらつきがあることは大変驚きです。

また、ここでは言及されていませんが、その他にも重要な要素があるとすれば、

・立地面(海抜、地盤、フロアなど)

・分散管理体制の有無(施設内、施設外)

も検討するべき点です。

 

立地面では川沿いなどであれば、洪水のリスクがあるかもしれません。

地盤が強いところでなければ、南海トラフのような大震災発生時にはリスクが生じます。

 

フロアについては、1階で保管をしていれば、もし火事などが発生しても、施設の外にタンクを持ち出すこともできます。

 

分散管理については、タンクに万が一のことがあった場合を想定し、同一施設の中でも2つのタンクに分けて保存することもできますし、複数の施設を持っている医療機関であれば、例えば当院の場合、仙台と高輪で凍結するということもできます。

高輪院の近くにはHOPE(日本卵巣組織保存センター)もあり、それぞれで採卵・凍結を行うことでの分散管理も可能です。

このように、リスクを分散して最小化する試みも講じられるようになりました。

 

皆さんの大切な凍結物を預けることになりますので、ぜひじっくりと検討していただければと思います。

 

 

 


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