論文紹介 2022.09.12
高輪院副院長の橋本朋子です。
本日は、NY大学から発表された卵子凍結に関する論文を、当院の成績とも照らし合わせながら、紹介したいと思います。
NY大学では2005年頃から2020年末までの15年間で543人800周期の卵子凍結を行い、そのうちの約6割、332人が卵子融解ICSIに至ったことを報告しています。前回のコラムで当院の課題は利用率の面にあることをお伝えしましたが、文化や社会的な違いもあり、かなりこの利用率は高いと思います。
当院の実績では生存率91.8%と先日の受精着床学会でも報告していますが、違いとして技術的な面も考えられます。
初回凍結時の年齢中央値は38.3歳、採卵数中央値14個、MII数12個、卵子融解までの期間中央値は4.2年であり、卵子生存率は79%と記載されています。
2000年代前半の凍結保存方法は現在のガラス化法でなく、緩慢凍結法であったため、生存率がやや低い可能性があること、一部MI卵子(未成熟卵)も凍結を行っていたこと(通常はMII卵子(成熟卵子)のみを凍結保存するもの。)が、融解後生存率が低い一因となっている可能性があると推測します。
なお、ガラス化法が広く普及した現代であっても、こと卵巣凍結については、緩慢凍結法が世界水準であることを補足しておきます。(卵巣凍結の緩慢凍結法に関するコラムはこちらから)
凍結した患者あたりの生産率は39%とかなり良好ですが、PGT-Aを7割の症例に実施し、正常染色体胚のみを移植していることが影響していると推測されます。
日本ではすべての患者さんにPGTを行うことは現実的には難しいため、全く同じ数値にはならないと考えられます。
生産に至った方の2割が卵子凍結保存時に42歳以上、最高齢は凍結時43歳でした。
多重ロジスティック回帰分析によると、出産に寄与した因子として、「凍結時年齢が38歳以下」「MII卵子数が20個以上」という指標が挙げられています。
この数値は一つの目安になると思われますが、当院の実績においては凍結卵子数が4個で生児を獲得された方もいらっしゃること、卵巣予備能・卵巣刺激への反応性には個人差もあるため、あくまでも一つの目安として考える程度で良いと思います。
京野アートクリニック高輪
副院長 橋本朋子
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