論文紹介 2022.09.19
高輪院、副院長の橋本朋子です。
今回も卵子凍結について紹介したいと思いますが、成績面だけではなく、費用対効果という医療経済の面も紹介したいと思います。
医療に対して費用対効果というと、ものものしく感じるかもしれませんが、社会的な卵子凍結は将来のお子さんを得るための保険的な側面を持っていますし、国の補助等もなく、働く女性が自分で得たお金を使って実施するものなので、しっかりと検証しておく必要があると考えます。
この論文は、ドイツの社会的卵子凍結の費用対効果に関する論文です。
40才までに積極的に避妊していた女性たちが、40才になって挙児希望となり、一年間自然妊娠に挑戦、その後以下3パターンの治療を選択したと仮定した場合の、45才時点での累積生産率および社会的卵子凍結の費用対効果を類推、比較したものです。
① 「凍結卵子使用群」過去に凍結保存しておいた卵子を融解して治療に用いる
② 「自然妊娠郡」そのまま自然妊娠に挑戦する
③ 「体外受精郡」41才になって一年間IVF/ICSIを試みる
なお、42才以降は三群とも自然妊娠に挑戦することとしています。
その結果、
社会的卵子凍結保存の年齢別の累積生産率は、やはり凍結時の年齢が若い方が生産率は高くなる(25才凍結が71.4%、38才時凍結が67.6%)
費用対効果的には、30才時の凍結保存が最適であったが、費用自体は41才でIVF/ICSI治療を行ったパターンの方が安かった
ということを報告しています。※参考までに、22,418ユーロ≒303万円(2022.8.1時の為替レート)です。
また、社会的卵子凍結保存した群は、自然妊娠に挑戦し続けた群と41才でIVF/ICSI治療を行った群とくらべて、やはり累積生産率は高いことから、社会的卵子凍結保存は、40才以上の女性の生児獲得に貢献すると考えられますが、著者らは、ドイツの社会的卵子凍結保存はコストパフォーマンスが悪いのではないか?と結論づけています。
社会的卵子凍結を行う方々は、その時には結婚の時期を明確にしておらず、必ずしもこの研究のように41才になったら不妊治療が行えるわけではありません。
すぐに相手が見つからなかったり、キャリア形成で難しい方もいるでしょうから、社会的卵子凍結を行うことには意義があるものと思いますが、何歳までに行うのが成績面や経済的な観点から良いのか、今後さらなる研究報告が待たれるところです。
京野アートクリニック高輪
副院長 橋本朋子
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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