卵巣凍結について 2022.08.16
日本卵巣組織保存センター(Human Ovarian-tissue Preservation Enterprise:HOPE)の京野です。
2016年11月に東京に設立し、2020年12月1日に自然災害にも強い品川区の高台にある御殿山に移転しました。特徴は1F部分に凍結保存タンクを設置し、火事が起きても外に避難できること、1人分の卵巣組織を2つの液体窒素タンクに分けて、分散することにより、リスクを減らすことが目的です。現在では最も症例数が多く、出産数も多い、ドイツのProf. M.MontagとJana Liebenthronにご指導いただいて設立しました。
ですから卵巣組織凍結については、もちろん“緩慢凍結法”を採用しています。
初回は世界の卵巣組織凍結の現状と凍結方法についてお話ししましょう。
2022年8月まで、世界では2004年以降200人以上の赤ちゃんが卵巣組織凍結(Ovarian Tissue Cryopreservation:OTC )/卵巣組織移植(Ovarian Tissue Transplantation:OTT)により出産しています。そのうち、97%以上は“緩慢凍結法(Slow Freezing:SF)”による凍結プロトコールです。ご存じでしたか?
まず、世界の移植当たりの妊娠率や生産率を紹介します。欧州5施設のOTT 285例の臨床成績を紹介します(2021)。5施設とも各々20例以上のOTTの実績があります。移植当たりの妊娠率37%(106/285),生産率26%(75/285)と報告されています1).一方,ガラス化(Vitrification:V)法による出産報告はわずか3例の症例報告のみです.米国の1施設の報告ではSF法とV法の両方を実施しています。13例のOTT後、10例すべてが自然妊娠で、妊娠率77%(10/13),生産率69%(9/13)、流産1例と成績がとても良いですね2)。ガラス化法による出産3例はすべてこの米国の施設の報告です。豪州の1施設の報告(すべてSF法)では55例にOTTを行い、すべてIVFを行い、妊娠率15%(8/55)、生産率11%(6/55)、1例継続妊娠、2例流産、7例化学的妊娠でした3)。最近の日本がん・生殖医療登録システム(Japan Oncofertility Registry:JOFR)では232例にOTCを行い、妊娠例は0です4)。
当院も卵子や受精卵に関してはガラス化法を採用し5)、良好な結果を出し続けています。
次回はもう少し、緩慢凍結法とガラス化法の違いについてお話ししたいと思います。
2022年8月16日
日本卵巣組織保存センター(Human Ovarian-tissue Preservation Enterprise:HOPE)
京野廣一
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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