論文紹介 2022.08.20
今回は、レコベルと新鮮胚移植と最短妊娠のお話です。
レコベルは、リコンビナントFSH製剤で、卵巣刺激に使用される薬 剤です。
患者さんのAMHと体重から最適投与量を算出することができ、適度な卵巣刺激ができることと、2022年4月からの保険適用でも使用できるようになったことで、一気に普及したように思います。
近年、特に日本では卵巣刺激法としてはランダムスタート法やPPOS法が普及したことや、卵巣過剰刺激症候群を回避するために新鮮胚移植を行わずに、全胚凍結を推奨する医療機関が増えたこともあり、世界と比較して新鮮胚移植が極端に少ない傾向にありました。
しかしながら、全胚凍結(Freeze all strategy)に偏りすぎることで、不妊治療を開始してから妊娠するまでの期間(Time to Pregnancy) が長期化してしまうというデメリットも指摘されています。
このレコベルという薬剤は、最適な使用をすることによって、卵巣刺激も適度にでき、卵巣過剰刺激症候群も回避できます。そのため新鮮胚移植が可能になることから、妊娠するまでの期間を短縮できるのではないかと期待されています。
しかもペンタイプですので、患者さんも自己注射がしやすく、通院負担が減ることから、女性の負担軽減、仕事と治療の両立にも貢献している部分もあるように思います。
さて、ベトナムの2018年の論文(レコベル自己注射)を紹介します。
採卵して3日目に新鮮胚移植した391名と3日目の胚を全凍結して、その後に融解して移植した391名の妊娠率と妊娠するまでの期間を比較した研究です。
年齢は32歳ととても若いですね。採卵数はどちらの群も13個前後です。
12週の継続妊娠率は新鮮胚移植の場合、36.3%、凍結胚移植の場合、34.5%と差はありませんでした。卵巣過剰刺激症候群の発生度は両群で差もありません。ところが、新鮮胚移植した場合の妊娠するまでの期間が2.2か月と有意に短縮しています。
なお、この研究対象として、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の患者さんは除外しています。
当院では2021年11月から積極的にレコベルを使用しています。
AMH値と体重からゴナドトロピンの投与量を決めることができ、卵巣過剰刺激症候群を心配せず、新鮮胚移植を実施できます。しかも新鮮胚移植の妊娠率も高いので、これまでのFreeze-all strategyを見直ししています。できるだけ患者さんの卵巣予備能力やご希望にそって対応しています。ご来院された際には、卵巣刺激法や治療の計画、将来何人お子さんがほしいかなど、ご自身のご希望を医師やスタッフにお伝えください。
注意点として、今回の研究にはPCOSの方は含まれていません。
PCOSの方は卵巣過剰刺激症候群が重症化しやすいリスクが高いので、診察の上、個別対応が必要になります。当院には、PCOSの患者様も多くいらしており、多くの方が卒業されていますので安心してご相談ください。
前回のレコベルに関するコラムは以下からも確認いただけます。
http://203.183.146.49/column/post-5436
Vuong LN et al. IVF Transfer of Fresh or Frozen Embryos in Women without Polycystic Ovaries.N Eng J Med 2018;378:137-47.
京野アートクリニック高輪
京野廣一
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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