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医療コラム

コラム 2022.10.03

保険診療で正しい男性不妊治療を~無精子症の話①無精子症かなと思ってから治療までの流れ~

精液検査が身近な時代になりました

僕が男性不妊治療の勉強を本格的に始めた2009年と比べて、世間では精液検査が一般的になってきました。病院での検査だけでなく、郵送で検査をするものや、携帯にアタッチメントのレンズを付けて自分で精子が見られるキットなども販売されています。これらの検査は十分なものではありませんが、手軽に自分で精子の状態を確認できるようになりました。

そういった検査で精子が見えないときはどうすればいいのでしょう。

精液中に精子が見られないことを無精子症といいます

キットなどではどうしても正確性に劣りますので、精子が見られないと結果が出た場合は専門病院での検査をお勧めします。精液検査は案外不安定なもので、禁欲期間や精子の採取状況などでも結果が変わってくることがあります。また均一でもないので一部こぼしてしまうと急に所見が悪くなってしまうこともあります。2-3日の禁欲をして、全量取れた精子で検査することが必要です。そのうえで遠心での検索も含めた精液検査を2-3回行い、やはり精子が見つからないとなった場合に無精子症の診断となります。

無精子症にはいくつか種類がありますが、大きく2つに分かれます

  1. 閉塞性無精子症
    精巣では正常に近い状態で精子を作っているものの、精子の通り道に問題があり外に精子が出てこないものです。この場合でも精液は射精されます。射精が全くでない場合もこれに含まれます。
  2. 非閉塞性無精子症
    精巣の機能が低く、精子を作っていないか、作っていても非常に少ないため精液中に精子が見られないものです。

無精子症と診断されてからの検査

閉塞性か非閉塞性かの診断はホルモン検査、精巣の触診・超音波、染色体検査、AZF遺伝子検査などの結果で行います。

4月からの保険診療化で以前まで自費診療であった染色体検査と遺伝子検査が保険で行えるようになりました。自己負担は2つの検査合わせて5-6万円していたものが、2万円となりました。もちろんホルモン検査や超音波なども保険でカバーされますので、診断に必要な検査費用は税込み3万円程度になります。

残念ながらまだ保険でカバーされていない自費となってしまう検査も一部ありますが、当院では患者様の希望をお聞きし、治療計画を立て柔軟に対応しています。

無精子症の手術

閉塞性か非閉塞性の診断がついたら精子を探す手術を予定します。残念ながら一部の無精子症を除いて薬物治療は有効ではありません。この手術は精巣内精子回収術といいますが、方法が大きく分けて2つあり、Simple TESEとMicro TESEに分かれます。別の機会に当院での手術の方法や成績なども含め詳しく説明しますので、今回は概要を述べます。

  1. Simple TESE
    閉塞性無精子症に対して行います。局所麻酔で日帰り手術です。精巣の一部を切開して中の精細管を取り出し、精子を検索します。閉塞性無精子症の場合は精子は精巣内で十分量を作っているため、高い確率で精子が回収できます。
  2. Micro TESE
    非閉塞性無精子症に対して行います。こちらも局所麻酔で日帰り手術です。精巣を陰嚢から露出させ、大きく切開し手術用の顕微鏡を使って、状態の良い精細管を採取します。精巣の状態が不良なケースも多く、精子の回収率は一般的に30%程度となります。

TESEの保険での負担は?

これらの手術が今回4月より保険診療化されました。

保険診療化前は対象者には一律30万円の補助金が出ており、負担が軽減されていましたが、現在補助金は終了しております。

下記に保険点数から算出した費用を記載しますが、Micro TESEの場合は多くの方が高額医療の対象となることが予想されます。精子が回収できた場合、凍結保存しますが、凍結費用もTESEの手術の費用に含まれています。保存された精子は妻の採卵の際に解凍され顕微授精に使用されます。

TESEのおおよその自己負担額

TESEの術後 術後~2週間までの合併症

TESEの術後にはいくつかの合併症の可能性があります。

手術1-2週間の間には、出血、感染、縫合不全などどんな手術でも起こりうるものが中心になります。起こさないようにするのが大切ですので、定期的な診察に加え、術後の生活の注意点や対処などお伝えしております。

TESEの長期的な合併症

長期的な合併症としては男性ホルモンの低下があります。精巣は精子を作る以外に男性ホルモンも作っています。精巣を切るためにこの力も減弱することがあります。もちろんそうならないように工夫をしておりますが、もともとの精巣の機能も関わってくることから、残念ながら0にすることは出来ません。男性ホルモンが下がると、ほてりや疲労感、意欲の低下、性機能障害、筋量の低下などが起きます。いわゆる男性更年期の状態です。治療は男性ホルモンを月に1回注射で補充し、安定すればほぼ術前と変わりなく生活することが可能です。


今回は、無精子症と思ってから治療までの一連の流れを説明しました。

今後は無精子症の治療の当院の成績や経験数に加え、TESEを決める病院の選び方、費用などお伝えしていこうと思います。

京野アートクリニック高輪

医師部 田井 俊宏


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診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)

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