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医療コラム

論文紹介 2022.09.05

反復流産と夫婦の染色体異常に関する論文紹介

流産を繰り返し経験した19,000カップルの染色体異常について解析した多施設研究

「Chromosomal abnormalities of 19,000 couples with recurrent spontaneous abortions: a multicenter study」

Fertility and Sterility, Vol.117, No.5, pp. 1015–1025, 2022

Seo-Jin Park, et al.


反復流産とは、2回以上の流産を経験したとき(ちなみに習慣性流産は3回以上の場合)とされ、子宮奇形、感染症、自己免疫疾患、内分泌異常および遺伝的な異常が原因とされますが、20-50%は原因が不明といわれております。また、夫婦のどちらか、または両方に染色体異常が認められるのは、2.7~8%程度と報告されています。

この研究では、反復流産を経験した19,000組のカップルのデータを調査し、その染色体核型を解析、また保因者のデータと染色体異常の種類との関係を明らかにすることを目的としております。

【対象と方法】

韓国の5つの産婦人科病院において、続けて2回以上の流産を経験した19,000カップル(38,000人)の夫婦の血液中の染色体核型について解析しました。

【結果】

〇19,000カップルのうち、844カップル(4.44%)で、夫婦どちらかに染色体の異常が認められました

〇染色体の構造異常は男性より女性の方が多く、若い年齢で多く認められ、61%が均衡型転座、14%が逆位、11%がモザイクという染色体の異常でした

〇染色体番号ごとの転座や逆位という異常が生じる頻度は、染色体番号が多くなるほど少なくなりました

この研究の結果は、染色体異常のある患者さまは若い年齢で反復流産を経験する傾向があることを示しており、 さらに染色体異常のタイプと患者年齢または性別に関係性がみられました。 また欠失や重複など反復流産に関連して257の新規染色体異常が発見されました。反復流産の原因解明や今後の治療法選択に役立つ可能性があります。


論文の内容は以上となります。流産を繰り返す患者さまは夫婦どちらかに染色体異常が原因の場合があり、その内容によっては着床前染色体構造異常検査(PGT-SR)が対象になります。PGT-SRとは、体外受精や顕微授精によって得られた受精卵の細胞の一部を採取し、流産しにくい染色体構造変化のない胚(またはバランスの取れた胚)を判定し、妊娠成功の可能性を高め、流産の可能性を低下させる検査です。

当院でもPGT-SRを行っておりますが、残念ながらまだ保険適応や先進医療登録がされてない検査のため、全額自費で行われています。少しでも早く先進医療や保険適応になることが望まれます。

京野アートクリニック高輪

培養部 青野展也


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