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医療コラム

コラム 2022.09.07

ART(生殖補助医療): 早く赤ちゃんが欲しい!上手な“保険適用”の使い方

京野アートクリニック高輪は港区高輪3丁目に開院しておかげさまで10年目を迎えることができました。
皆様に感謝申し上げます。

その間にARTは目まぐるしく変化してきました。急性リンパ性白血病の患者さんが“凍結卵子”から出産に成功したこと、FT(卵管鏡下卵管形成術)を導入し、卵管因子が原因の患者さんが自然妊娠されたこと、タイムラプスを導入したこと、2016年にはHOPE(日本卵巣組織保存センター)を開設し、30名の患者さんの卵巣を“緩慢凍結法”で凍結保存してきたこと、ERAや子宮内細菌叢検査(フローラ)をいち早く導入したこと、PGT-A/PGT-SRを導入したことなど、この10年間を振り返っただけでこんなに目まぐるしく進歩してきました。
2022年4月からARTの保険適用が開始され半年になります。皆さん、上手に活用されていますか?

 

(1) 理想とする採卵個数
適切な採卵個数、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の程度、採卵あたりの累積生産率を念頭において判断します。
採卵個数に関しては年齢、卵巣予備能力(AMH値、AFC)を念頭に置いて卵巣刺激方法やゴナドトロピン投与量を決め、Triggerに関しては成熟卵胞数、血中E2値を参考にして、点鼻単独、hCG (投与量考慮)単独、Dual triggerを決定します。一般に採卵当たりの累積生産数は採卵個数が多いほど高いが、15個以上の場合は重症OHSSや血栓症の頻度が増してきます。保険の場合はOHSS軽減する手段として、カベルゴリン(カバサールⓇ)やレトロゾール(フェマーラⓇ)を使用します。保険で認められる範囲での卵巣刺激を行い、できれば6~14個の採卵数をめざします。OHSSが軽度の場合にはTime to pregnancy短縮をめざし新鮮胚移植を行い、余剰胚は胚盤胞で凍結します。採卵数が10個を超え、OHSSが中等度以上の場合には全胚盤胞凍結をめざします。1周期あけて、凍結胚盤胞移植することによりOHSSを心配することなく継続妊娠率が高めることができます。40~42歳の場合には胚移植回数が3回までのため、できるだけ妊娠率の高い凍結胚盤胞移植をめざします。しかし、卵巣予備能力も低下し、異数性異常胚の確率も高くなることを考慮し、なかなか胚盤胞が得られない場合は初期胚の新鮮胚移植を行います。

(2)男性不妊症を認める場合
男性不妊で精液所見が異常で精策静脈瘤を認める場合は、積極的に保険で低位結紮術をおすすめします。無精子症の場合は精巣内精子採取術(TESE)を行い、精子を回収して顕微授精(ICSI)を行います。受精率が低い場合は、次回から卵子活性化を併用します。

(3) 卵管因子を認める場合
特に卵管間質部閉塞の場合には卵管鏡下卵管形成術(FT)を積極的におすすめします。卵管が通過すれば、自然妊娠やAIH妊娠も可能となります。

(4) 保険採用となった手技
2022年4月から新しく保険採用された、卵子活性化(ICSIで受精率が50%より低い場合)、アシステッドハッチング、高濃度ヒアルロン酸培養液を用いた胚移植は適応に応じて積極的に取り入れましょう。

(5) 先進医療として承認された手技
可能な限り、積極的に取り入れ実施することにより、妊娠率を高め、生産率を高めることが期待されます。

 

皆さまの夢が早く実現しますようにお祈りします。保険適用、上手に活用してくださいね。

 

京野アートクリニック 理事長 京野廣一
2022年9月吉日

参考文献

1. 福岡 由利子他.TESEを施行した1,074症例の臨床成績および生児獲得率向上のための検討.日本受精着床誌.2022; 39:75-80.
2.左 勝則、 他. 卵巣刺激法別採卵周期あたり累積生産率の検討.産婦の実際.2021;70:1587-1592
3.Magnusson A, Kallen K, Thurin-Kjellberg A, Bergh C. The number of oocytes retrieved during IVF: a balance between efficacy and safety. Hum Reprod . 2018; 33:58-64.


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