学会報告 2023.02.07
こんにちは。生殖医療相談士の越智です。
先日、2月5日に東京の紀尾井町カンファレンスにて、第20回生殖心理学会が開催されました。
紀尾井町カンファレンスってめちゃくちゃキレイですね。すごいモチベーションが上がる会場でした。
その学会にて、「生殖医療相談士によるAYA世代がん患者の妊孕性温存に関する情報提供を通じた意思決定支援について」というテーマでポスター発表をさせていただきました。
簡単ですが、どのような内容であったかをここで紹介できればと思います。
発表内容の前に、この時点の患者さんが置かれた状況をぜひ想像してみてほしいと思います。
若年にしてがんになる、ということを予想して毎日を過ごしている人はいないでしょう。
決して周りにも多くはありません。その中で、ある日突然、自分が「がん」に罹患したことがわかります。
長期的な生存率が高まっているとはいえ、やはり恐怖は大きいですし、不安が常に付きまとうのは当然です。
がん治療には、手術療法や放射線療法、抗がん剤治療など様々にあるけれど、どれだってとても大きな葛藤を抱えます。
そのことを考えるだけで、心のキャパシティはいっぱいいっぱいだと、私は患者様を見ていて感じました。
また、多くの若年性がん患者さんは、妊娠についてよく考えていたり、自分の生殖能力を正確に把握しているという方は多くありません。
基礎的な知識が圧倒的に足りない状況の中で、ある日突然、「将来妊娠できる可能性が低くなっちゃうかもしれないけど、治療を希望しますか?」と聞かれます。
なかには、「希望するならよく考えておいてね」、なんて言われて資料を渡される方もいます。
この状況で、正しく情報収集をして、意思決定をすることができるだろうか、と考えた時、これは到底難しいだろうという結論にいたりました。
この状況を解決するために初めた活動が「情報提供」です。
対象としては、2018年3月から2022年11月の間に情報提供を実施した228例を、性別や年齢などの患者属性、妊孕性への事前の理解度、治療選択、患者からの声を診療データより解析しました。
結果としては、以下の通りです。
情報提供をしても全員が妊孕性温存を実施するわけではなく、断念する方もいます。
高齢のため、妊娠できる可能性が低いからという理由や費用的な問題、がん治療とのスケジュールが合わないなどの例もあります。
情報提供の際にもお伝えしていますが、がん治療により妊孕性は完全になくなるかどうかは定かではない治療もあります。
つまり、妊孕性温存をしなくても妊娠することができる可能性もあるかもしれないというわけです。
情報提供を通じて、そういう曖昧な状況にあることや、【不選択】という選択肢も共有した上で、患者さん本人に意思決定をしていただくようにお伝えしています。
患者様の声は非常にありがたい声も多く、いつも励みにさせていただいています。
ただ、どうしても私が実施して、院からアンケートが来るわけなので、悪いコメントはしづらいでしょうし、まだまだ課題はたくさんある、と思い対応しています。
妊孕性温存の方法は卵子凍結、受精卵凍結、卵巣凍結、精子凍結があり、確立した技術となってきています。(卵巣移植はまだ試験的)
技術は確立しても、そこに患者さまの心がついてきていなければいけませんし、しっかりと心のケアにも重きをおいた妊孕性温存を当院で今後も実施していきます。
もし、若年でがんとなり、妊孕性温存で悩んでいる方がいらっしゃったら、ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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