論文紹介 2023.04.17
今回は卵巣刺激において、採卵前に卵子を成熟させるために用いるトリガーの違いが受精卵の形態や動態に影響を与えるか検討した論文を紹介させていただきます。
まず、トリガーにはHCG、GnRHアゴニスト(卵巣刺激にも使われるお薬で、ブセレリンなどがこれにあたります)、この2つを組み合わせて使うデュアルトリガーがあります。
従来、トリガーにはHCGが多用されてきましたが、近年デュアルトリガーを使用するケースが増えております。
デュアルトリガーはHCGのみを使用したときよりも採卵数や成熟卵数が増えるという報告があり、卵子の成熟率の改善に効果的と考えられておりますが、まだ様々な議論が続いている状況です。
また、卵子や受精卵の質は排卵誘発剤やトリガーの影響を受けると考えられているため、今回紹介する論文の筆者らはトリガーの違いと受精卵の形態や動態への影響という点に着目し検討を行いました。
対象となる症例は全員アンタゴニスト法で卵巣刺激を行っており、HCGをトリガーにした群とデュアルトリガーを使用した群とに分けて比較を行いました。
採卵数や卵子成熟率を比較した結果、2群間で採卵数に差は認められませんでした。
卵子成熟率はHCG群で高くなるという結果が得られました。
この結果に対して、筆者らは、デュアルトリガーによる卵子成熟率の上昇が認められるのは、元々卵子成熟率が低い症例に限るのではないかと考察しております。
受精卵の細胞が分割していく時間を比較したところ、両群に大きな差は認められませんでした。
また、良好な受精卵の指標となるcc2(2細胞から3細胞になるまでの時間)が5時間以上であること、多核胚でないこと、受精卵の割球が対称に分割すること等を2群間で比較したところ、cc2が5時間以上である受精卵の割合がHCG群で高くなりましたが、それ以外の項目では両群に差は認められませんでした。cc2が5時間以上である受精卵の割合がなぜHCG群で高くなったのかさらに検討を行っていましたが、影響する因子は不明と述べておりました。
結論として、両群間で受精卵の形態や動態に大きな差は認められませんでしたが、今後も様々な方法でトリガーの種類が卵子や受精卵に与える影響を検討していく必要があると考えられます。
参考文献
Oron, Galia, et al. “Effect of the co-administration of HCG and GnRH agonist (dual trigger) versus standard HCG trigger on morphokinetic embryo parameters.” Reproductive BioMedicine Online 45.4 (2022): 696-702.
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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