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医療コラム

論文紹介 2024.01.26

保険診療で正しい男性不妊治療を 病気のはなし④ 脊髄損傷があった場合の、男性の不妊症対策 その2

脊損の患者さんの妊娠を考えて

前回の記事で脊損状態で長時間過ごすことで精子の状態が悪くなることを書きました。射精できる方であっても、受傷後 2 週間ほどで精子の運動率や形態の低下がみられるとの報告もあり、徐々に精子の状況が悪くなっていくことを考慮しなくてはなりません。1)
今回は考えられうる対策について述べたいと思います。大本の題名が「保険診療で・・」なのですが、今回は自費の話も出てきてしましますがご容赦ください。

精子を探す方法と成績

射精がない場合、精子を探すために精巣を切る必要が出てきますが、精巣の機能が落ちてくると手術の方法が変わり、侵襲性(手術で切る量が大きくなる等の体に対する影響)が大きくなってきます。
ある報告では受傷後12年以内の22例で手術を行い、すべて精子回収ができているものの、10例は小さく精巣を切る(Simple TESE)だけで回収できているものの、12例は大きく精巣を切り開いて(Micro TESE)精子を探す必要がありました。受傷12年を超える30例では、14例はSimple TESEで精子が取れていますが、16例がMicro TESEが必要で、そのうち4例しか精子が見つかりませんでした。つまり10例は精子が認めらなかったということです。2) これより、受傷してから時間をおかずに精子を確保することが重要であると考えられます。

精子を取ることだけが重要じゃない

脊損の状態では痛みなどが感じにくいため、手術の傷が感染した場合などに気が付くのが遅れてしまい、重症化しやすいリスクがあります。排尿や排便のコントロールもつきにくいため感染自体のリスクも高いです。
また、脊損男性のうち43%に男性ホルモンが低下しているという報告もあります。3)また、Micro TESEは精巣のダメージがが大きくなるため、さらに男性ホルモンが下がるリスクがあります。術後に感染を起こしたりすればなおさらです。男性ホルモンが下がりすぎると更年期のような不快な症状が出ることがあり、月1回の注射でのホルモン補充が必要になります。
できる限り小さい処置でしっかりといい精子を回収できることが将来の妊娠や、その後のご自身の健康に有利に働くと考えられます。できればSimple TESEで精子を回収できることが望ましいです。

現時点で子供を作ろうとしている方へ

ご結婚している方、決まったパートナーがいらっしゃる方なら、精子の質や、精巣機能の低下を考えると出来るだけ早めに不妊クリニックにご相談を頂くことが望ましいと考えます。
射精が問題なくできる方なら、必要時に精子をとっていただき、人工授精か採卵をして体外・顕微授精をすることになります。これは基本的には保険で施行可能です。また射精が出来るものの、タイムリーに行うのが難しいという方は精子凍結を行いますが、精子凍結自体は自費になってしまいます。
射精が不可能な場合はTESEを行います。その後の流れで顕微授精を予定できるなら、一般的な不妊治療ですので基本的には保険で対応できます。その場合の精子凍結はTESEの費用に含まれますが、奥様が妊娠されて当分不妊治療の予定がない状態であれば、凍結更新は自費になりますが、次のお子様を希望された際にはまた保険で不妊治療が可能です。これは脊損の有無にかかわらず、保険で凍結物を作成した方は同様の対応です。

まだ子供を作る予定がない方へ 妊孕性温存

現在、残念ながら脊損男性に対する妊孕性(妊娠する力)の温存に対する公的補助は出ていません。
射精が出来る方は年1回位の精液検査・ホルモン検査で経過を見るのもいいでしょう。しかしながら急な尿路感染で精巣が腫れてしまったりすると、精子の通り道が詰まって無精子症になることがあります。凍結・保存には費用は掛かりますが、状態のいいうちに精子凍結を行ってしますことも一案だと思います。
射精が不可能な方は、受傷後できるだけ早くTESEをして精子を確保してしまうことも考慮してもいいかもしれません。現在の保険システムではカップルとしてすぐに不妊治療の予定の無い方へのTESEは自費になってしまいます。しかしながら、Simple TESEで精子が取れれば手術代もMicro TESEの半分以下で済みます。精子の凍結費用と、毎年の更新費用は掛かってしまいますが、その時になって「精子が取れない」、「精子の状態が悪くてMicro TESEが必要になったうえに、不妊治療が長期化する」などのことを考えると結果的には身体的・費用的負担は軽く済むかもしれません。
また明らかにご自身が子供を作る力が残っていることがわかっていることも、人間関係の構築や結婚への積極性に対する大きな要素であると考えられます。

脊損の方に対する手術

当院では脊損の方に対するTESEを行っています。Simple TESE、
Micro TESE共に対応可能です。かかりつけの先生がいらっしゃる方については感染予防や術後の管理など連携をとって対応いたします。
ご相談だけでも結構ですので、気になった方は是非ご来院ください。
しかしながら、診察したうえで損傷部位が高く横になると呼吸が悪くなる方や、体調や生活環境などから、管理上入院の方が安全であると判断する場合もあります。その場合は対応可能な大学病院へのご紹介も行っております。

※当院の自費料金についてはHPのこちらをご参照ください
料金一覧

1) Iwahata T, Shin T, Shimomura Y, Suzuki K, Kobayashi T, Miyata A, Kobori Y, Soh S, Okada H. Testicular sperm extraction for patients with spinal cord injury-related anejaculation: A single-center experience. Int J Urol. 2016 Dec;23(12):1024-1027. doi: 10.1111/iju.13226. Epub 2016 Oct 21. PMID: 27766729.
2) Elliott SP, Orejuela F, Hirsch IH, Lipshultz LI, Lamb DJ, Kim ED. Testis biopsy findings in the spinal cord injured patient. J Urol. 2000 Mar;163(3):792-5. PMID: 10687979.
3)Durga A, Sepahpanah F, Regozzi M, Hastings J, Crane DA. Prevalence of testosterone deficiency after spinal cord injury. PM R. 2011 Oct;3(10):929-32. doi: 10.1016/j.pmrj.2011.07.008. PMID: 22024324.


診療時間

診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)

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