コラム 2024.04.02
前回も書きましたが、社会的妊孕性温存は、年齢や、仕事、ライフスタイルなどによってすぐに妊娠を望まないものの、将来的には妊娠したい、その時に年齢などの不安要素を出来る限り払しょくしたい、といった要望に応えるためのものです。
女性の妊孕性は年齢によって大きく変化します。
個人差もあるため、画一的には決められませんが、かなり古い1961年のデータでは、不妊の頻度は25歳~29歳では8.9%、30~34歳では14.6%、35~39歳21.9%、40~44歳では28.9%と報告されています。この時代はいわゆる不妊治療はなく、女性も若いうちから継続的に妊娠出産していたので、40台でもある程度妊娠できていたのだと考えられます。しかしながらやはり30代から自然妊娠するのが少しずつ難しくなっているのがわかります。
また、下のグラフは17~20世紀における女性の年齢と出産数の変化を表しており、年齢ともに低下していくことがわかります。この時代も出産数は多く、若い年齢からの出産が主です。現代では高い年齢での初産が多い分もっと厳しいと考えていいと思います。
男性は年齢が上がっても精子の所見がいい方もいますし、パートナーの年齢が若いと妊娠出産につながる方もいらっしゃいます。しかしながらやはり男性も年齢と共に精子の所見や質は下がっていきます。それに伴い妊娠率や流産率が上がるなどという報告もありますが、女性ほど顕著なものではないとするものが多く、見解も一定ではありません。1)
男性についてはやはり病気治療に基づく妊孕性温存が多くを占め、社会的妊孕性温存はLGBTの性別適合治療前や、職業的にリスクの高いものが対象になるとしているものもあります。
いくつかの報告では男性も社会的妊孕性温存を行っているとする報告もあります。例えばフランスの生命倫理法は男女とも医学的適応がなくても社会的妊孕性温存を認めているようです。しかしながら男性の妊孕性温存には疑問の声も多く、凍結すること自体が精子に影響が起こりえることと、老化で起こる影響の比較が難しい事や、多くの男性がある程度高齢になっても精子が認めららることから、女性ほどのコンセンサスが得られるかという疑問があります。またいつまで凍結物を維持するのかという問題もあります。2)
現在、年齢を理由とした男性の社会的妊孕性温存は当院では行っておりません。LGBTの治療前の方に対しては専門医からの紹介を前提に、面談の上対応しております。
あくまで、社会的妊孕性温存は医学的にコンセンサスが得られることが前提であり、将来の妊娠を保証するものではなく、妊孕性問題のタイムリーなケアに代わるものではないことを明確にすることが重要と考えます。
1) Mazur DJ, Lipshultz LI. Infertility in the Aging Male. Curr Urol Rep. 2018 May 17;19(7):54. doi: 10.1007/s11934-018-0802-3. PMID: 29774447.
2) Labrosse J, Grynberg M. Fertility of tomorrow: Are there any restrictions left? Ann Endocrinol (Paris). 2022 Jun;83(3):207-209. doi: 10.1016/j.ando.2022.04.011. Epub 2022 Apr 21. PMID: 35461885.
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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