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医療コラム

論文紹介 2024.04.04

保険診療で正しい男性不妊治療を 新しい無精子症の手術について③ MMTSE(Micro Mapping Testicular Sperm Extraction)の成績

MMTSEでの精子の検出率

今回、論文にした内容としては、40人にMMTSEを行った成績を提示しています。1)
40人のうち、MMTSEで精子が検出でき、小さい切開で行った追加採取を15人に行いました(便宜上Group 1とします)。全員が顕微授精に5回以上用いられるだけの精子を採取出来ました。9個の精巣でサンプリングの位置によって、精子の運動性や形態などのコンディションに差がありました。
MMTSEで精子が見つからなかった25人の(便宜上Group 0とします)には、Micro TESEを行いました。うち、4例に精子が見つかりましたが、精巣組織の変性が強くが固い、精子の絶対量が極めて少ないなど条件の厳しい方が見られました。
しかしながら今回の検討で、精子が見つかる19例のうち15例(約78%)は精巣を大きく切らずに、精子が見つかり、9例はよりコンディションのいいものを選んで採取できたことになりました。

MMTSEでとった精子での顕微授精の成績

論文作成の集計時には、Group 1の精子が取れた15例のうち、12例がICSIに進み、Group 0の4例のうち、2例がICSIに進みました。
Group 1では、授精率:59.7% (92/154), 胚盤胞到達率:45.6% (42/92), 移植当たりの妊娠率:80% (8/10)でした。Group 0では 授精率:53.3% (8/15), 胚盤胞到達率, 移植当たりの妊娠率:25% (1/4)でした。
まだ症例が足りなく、統計学的に有意を出すことは出来ませんでしたが、MMTSEで精子が見つかり、小さな傷とった精子でも、十分な治療成績が上がっていると考えられます。

MMTSEの合併症のリスク

Group 1とGroup 0で術後1か月のホルモンの動きを見ました。1)
Group 0ではLH、FSHが有意に上昇し、男性ホルモン(総テストステロン)が有意に低下しました。これらの変化は精巣の機能が落ちてしまっている所見となります。これは一般的にMicro TESEには起こりうることで、時間をかけて回復していくことも十分にあります。
しかしながら、Group 1ではLHが上昇したのみで、FSH、男性ホルモンは変化しませんでした。そのため、術直後の状況としては、Group 1ではダメージが小さく手術が行えたと考えられます。
術後の痛みの印象も小さい印象で、術後の精巣のエコー像の変化や、出血も少ない印象でした。こちらは調査としては行っていないので今後はアンケートなどで評価したいと思います。

画像

MMTSEにかかった時間

手術開始からサンプリングをして、組織の処理と顕微鏡で精子検索の結果を出すまでに、平均で25.6+/-7.55分かかりました。全体の手術時間は追加採取のみで済んだGroup 1では57.0+/-15.4分、Micro TESEを行ったGroup 0では82.9+/-15.4分かかっているので、MMTSEで精子が見えればかなり短い時間で良い精子を確保することができると考えらえます。

MMTSEの成績について

今回の検討の期間では精子回収率もよく、有意義な結果が出せたと思います。
一般的なデータより、精子回収率がこの期間でいいのは、偶然による偏りであり、患者の意図的な選別やなどは行っておりません。症例を重ねれば一般的な非閉塞性無精子症のMicro TESEの成績に近づいていくと思われます。
今回、Micro TESEでしか精子が見つからなかった方はシビアな条件の方が多く、どの方法でアプローチしても最終的にMicro TESEが必要であったと思われます。

MMTSEが効果を発揮するシチュエーション

もちろんまだまだ検討は必要ですが、MMTSEは比較的容易に取れる方にとってはMMTSEは手術による負担を減らすいい方法ではないかと考えられました。

1)Tai T, Miyamoto W, Fukuoka Y, Shibasaki S, Takahashi M, Okuyama N, Hattori H, Ishikawa I, Nagaura S, Yoshinaga K, Koizumi M, Hashimoto T, Toya M, Kumagai J, Igarashi H, Kyono K. Micromapping testicular sperm extraction: A new technique for microscopic testicular sperm extraction in nonobstructive azoospermia. Reprod Med Biol. 2024 Mar 11;23(1):e12566. doi: 10.1002/rmb2.12566. PMID: 38476958; PMCID: PMC10927935.


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