論文紹介 2018.09.25
数年前からブルーライトという言葉はよく耳にするかと思います。その名の通り、青色の光のことで、主にパソコンやスマートフォンなどの画面から出ている光のことを指します。
今回はブルーライトと不妊の関係についてお話させていただきます。
ブルーライトの人体への影響として真っ先に思いつくのは眼精疲労かと思います。その他にも体内リズムにも関係していることが1980年代の研究でも明らかになっています。
眼などへの悪影響だけが注目されがちですが、実は朝、昼はしっかりとブルーライトを含む光を浴びることが大切で、その刺激が眼から脳に伝わり、体が目覚めて活動的になるのです。一方、夜はブルーライトを避けることが必要です。夜にブルーライトを浴びると、脳がまだ昼間だと勘違いして睡眠を促す『メラトニン』という物質が分泌されなくなってしまいます。
実際にハーバード大学での研究で、12名の健康な男女を無作為に2つのグループに分け、一方のグループにはタブレット端末で、もう一方は紙の本で、就寝前に読書してもらい、『メラトニン』の分泌や睡眠の状況を比較しています。その結果、タブレット端末で読書をしたグループは紙の本で読書したグループに比べて、『メラトニン』の分泌量が少なく、分泌のタイミングも遅かったそうです。
また、寝付くまでにかかった時間はタブレット端末グループは紙の本グループに比べて平均10分余計にかかっています。
さらに、タブレット端末グループは紙の本グループに比べて、夜は眠くなりにくく、朝の眠気がとれなかったそうです。
睡眠と不妊については様々に関係があると報告されていますが、就寝前にタブレットで読書することは、メラトニンの分泌が抑制され、睡眠の質も低下させてしまう可能性が高いと考えられています。
睡眠と不妊の関係について
また『メラトニン』には抗酸化作用があり、卵子の質をよくする目的で、当院から『メラトニン』のサプリメントを処方されて、飲んでいる方もいらっしゃるかと思います。せっかくサプリメントから摂取しても、ブルーライトによって分泌を抑制されては、元も子もなくなってしまいます。
人の目は、一日のリズムを作るうえで重要な働きをしています。
一般的には体内時計といわれたり、サーカディアンリズムといわれたりしますが、そこでかかわってくるのが「光」です。時差ボケの解消には朝の光を浴びるといいといわれるのは、ブルーライトを多く含む朝の太陽の光でサーカディアンリズムがリセットされるからです。
ブルーライトは非常に強い力を持った光であるため、浴びる時間帯を間違えると、体内時計がくるってしまうことへつながります。それはホルモンバランスの乱れの原因にもつながっていく可能性があります。
ブルーライトへの対処法としては、
などが有効かと思います。
日常生活の中でブルーライトを完全にシャットアウトすることは難しいとは思いますが、就寝前だけでもスマートフォンなどを見ないように心がけてみてはいかがでしょうか。
参考論文
Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertness Proc Natl Acad Sci U S A. 2015; 112: 1232-1237
ブルーライト研究会
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