論文紹介 2018.08.28
子宮奇形は着床不全を来すため、不妊症の原因のひとつとされています。不妊症における子宮奇形の頻度は8%程度と考えられます。
その中で弓状子宮の頻度が最も高いとされ、卵管造影検査などで弓状子宮ですね、と指摘された方もおられると思います。弓状子宮が着床不全の原因となるのか、これまで多くの議論がなされてきました。最近、この議論の答えとなるような研究論文が発表されました。今回は染色体正常胚のみを用いた融解胚移植で、正常子宮と弓状子宮での治療成績を検討した論文を紹介します。
Arcuate uterus: is there an impact on in vitro fertilization outcomes
after euploid embryo transfer?
Fertility and Sterility, 2018:109;638-643.
目的 | 弓状子宮は染色体正常胚の移植に対して影響を及ぼすか |
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デザイン | アメリカの生殖医療施設での後方視的検討 |
対象 | 2014年にCCS(comprehends chromosomel screening:胚の染色体検査)を受け、染色体正常胚の融解胚移植を受けた患者 |
主要評価項目 | 生産率と着床率(心拍陽性) |
① 第1群(弓状子宮)78人、83移植 | ② 第2群(正常子宮)354人、378移植 | |
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着床率 | 63.7% | 65.4% |
生産率 | 68.67% | 67.8% |
化学的妊娠 | 8.4% | 7.65% |
流産 | 4.8% | 4.27% |
2群間に差はなく、弓状子宮は妊娠に影響を与えない
これまでに様々な検討があるが、弓状子宮が体外受精の結果に影響するとしているのは少数派である。中には外科的切除群との比較も見られるが、移植胚の状態、手術の適応など不確実な部分が多くあり、解釈が難しかった。また、これらの検討の大半は弓状子宮以外の子宮奇形の影響も受けており、純粋な弓状子宮の妊娠への影響はあきらかでなかった。
2016年のアメリカ生殖医学会(ASRM)のガイドラインでは弓状子宮は妊孕性に影響を及ぼさないとされているが、これまでに染色体正常胚を用いての弓状子宮の妊娠に対する影響を検討したものはなかった。染色体異常の有無は妊娠、流産にとって重要なファクターとなり得るため、染色体正常胚での検討をした。
本検討では2016年のASRMによる弓状子宮の定義により診断し、検討した(弓状子宮:子宮内腔の卵管角を結んだ線と垂直な線の深度が4-10mm、かつ子宮内腔の子宮底部の角度が90度以上)。ただし、子宮奇形の診断はもうひとつ、ヨーロッパ生殖医学会によるものもあり、診断方法が若干ことなると結果が変わってくる可能性がある。今回の検討からは弓状子宮が妊娠に与える影響はなく、外科的手術の適応がないことをあきらかにした。
当院でも弓状子宮に対しては特別な治療を行っておりません。中隔子宮など着床不全を起こしやすい子宮奇形に対しては、連携医療機関に手術療法をお願いする場合もあります。子宮奇形は治療の適否を判断することが非常に重要です。お悩みの方は是非外来でご相談下さい。
京野アートクリニック 婦人科 長浦聡子
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