コラム 2018.06.26
以前、『乳ガンと妊孕性温存について』というコラムでは、女性の妊孕性温存(若年がんなどに対する治療によって将来子どもを授かる可能性が無くならないように生殖機能を温存すること)について紹介させていただきました。
今回は、男性の妊孕性温存についてご紹介させていただきます。
若年(15歳以上40歳未満)の日本人男性に多いがんとして、精巣腫瘍(がん)と白血病などの血液のがんが大半を占めます。特に精巣腫瘍は、20歳~30歳でかかる人が急増します。今回は精巣腫瘍についてお話していきます。
精巣腫瘍にかかる確率は10万人に1人程度ですが、食事の欧米化などの食生活の変化やライフスタイルの変化によって年々増加傾向にあります。
特に、20~30歳代の男性では最も多いがんの一つです。要因は様々ありますが、男性不妊症、特に精液検査で異常のある男性に多いとされています。
主な症状は、片側の精巣の腫れや硬さの変化ですが、多くの場合痛みや発熱などがないため、かなり進行しないと気付かないことも少なくありません。しかし、がん治療が効きやすく、がん全体に比べて死亡率は0.1%未満と少なく、比較的予後は良好です。
精巣は抗がん剤や放射線によるダメージを受けやすく、生殖可能年齢での化学療法や放射線療法は生殖機能を著しく低下させる可能性があります。
化学療法で使用する薬剤のうち、アルキル化剤や白金製剤は、一時的に無精子および精子減少を引き起こすとされています。しかし、80%は5 年以内に正常に戻るとされています。
他の報告でも化学療法後では50%以上の症例に精子数の回復が認められていますが、妊孕性が回復しない場合もあります。また、精子数が回復しても、精子の質は治療後に落ちるという報告があります。
放射線療法では、照射線量が多いほど不妊期間が長くなるとされています。
また、泌尿器科系がんや直腸がんの手術療法後に、性機能障害(射精障害、勃起障害、性欲の減退)や性交障害がみられることがあります。
がん治療後に推奨される避妊期間ですが、催奇形性を有する薬剤を投与した場合、薬剤の半減期の5倍に90日を加算した避妊期間が必要だと言われています。
がん患者様においては、なによりもがん治療が最優先されるべきですが、担当医師によって妊孕性温存を考慮することが可能であると判断された場合、がん治療を始める前に精子を採取し凍結保存をすること(精子凍結)をお勧めします。
将来、がん治療によって妊孕性が低下していても、治療前の精子を凍結しておくことで、パートナーの方との間にお子様を得られる可能性を残すことができます。
一般に精子凍結の積極的な適応となるのは、
凍結する精子の採取は、マスターベーションによる精液の回収が一般的な方法です。短時間で可能であり、抗がん治療を遅らせずに実施することができます。
射精した精液中に精子が確認できなかった場合(無精子症)や、精液所見が著しく悪い場合、精巣内精子採取術(TESE)という採取方法もあります。なお、手術の適応となるかどうかは医師との相談になります。
妊孕性温存のための精子凍結をご希望の方、詳しい情報を知りたい方は、お電話やスタッフに直接お問い合わせください。
参考資料
仙台看護部 佐々木
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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