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医療コラム

論文紹介 2018.06.12

体外受精による妊娠間隔における周産期リスクと周産期予後の関係

In vitro fertilization, interpregnancy interval, and risk of adverse perinatal outcomes.
Fertil Steril. 2018 May;109(5):840-848.e1. doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.01.019.

今回の論文は、体外受精による妊娠間隔における周産期リスクと周産期予後の関係について述べたものです。

不妊治療を行なって、無事妊娠・出産した後、人によっては次子を考える方もいらっしゃると思います。

ご年齢やご家庭の事情によっては、なるべく早く次子を妊娠・出産したいと考える場合もあるかと思います。その場合、前の妊娠から次の妊娠までどれくらいの期間を空けるのが望ましいのでしょうか。WHOは妊娠と次の妊娠までの期間 interpregnancy intervals (IPIs)の推奨は、生産後は24ヶ月以上、流産・中絶後は6ヶ月としています(2005年)。WHOの推奨には体外受精治療中の患者に対する特別な推奨事項はありません。

では論文の内容です。

題名 In vitro fertilization, interpregnancy interval, and risk of adverse perinatal outcomes
目的 体外受精後の妊娠と、自然または体外受精以外の治療後の妊娠における、妊娠と次の妊娠との間隔とその周産期合併症について比較すること
研究デザイン アメリカ合衆国マサチューセッツとミシガンの生殖医療調査と出生証明書を使用したコホート研究
患者 2000-2010年に登録された 1,225,718分娩 (体外受精 12,633分娩、体外受精以外 1,213085分娩)

言葉の解説

妊娠と次の妊娠までの期間
interpregnancy interval(IPI)
直近の妊娠が終了した日から最終月経まで
preterm birth (PTB) 37週未満の早産
low birth weight (LBW) 2500g未満の低出生体重
small for gestational age (SGA) 10%タイルの子宮内胎児発育遅延
主要評価項目 前回妊娠時が生産・非生産であった場合のIPIとPTB、LBW、SGAの関連を評価すること

結果

前回生産で体外受精で妊娠したグループ

IPI 12 ヶ月~ 24ヶ月 早産率 22.2% LBW率 14.1% SGA率 9.7%
上記に対して早産率
~12ヶ月  補正相対リスク 1.24 (95%信頼区間 1.09-1.41)
60 ヶ月~ 補正相対リスク 1.12, 95%信頼区間 1.00-1.26
LBW SGAについても同様の結果

前回生産で体外受精以外の方法で妊娠したグループ

IPI 12 ヶ月~ 24ヶ月  早産率 6.4% LBW率 4.4% SGA率 6.5%
~12ヶ月 補正相対リスク 1.19, (95% 信頼区間 1.16-1.21)
60ヶ月~ 補正相対リスク 1.19, (95% 信頼区間 1.16-1.21)
LBW についても同様の結果

前回の妊娠が非生産だったグループ

  • IPI 12ヶ月未満では 体外受精グループ、体外受精以外のグループとも PTB、LBW、SGAリスク上昇と関連しない
  • 体外受精以外のグループの分娩ではIPI が60ヶ月以上で有意に合併症リスクが上昇する

筆者らは今回の結果となった理由として、以下のように考察しています。

  • IPIが短い場合、母体の肉体的回復が不十分であること、栄養の枯渇、精神的ストレス、児のケアや食事の世話、膣内細菌叢の修復が間に合わない。
  • 期間が長い場合、母体年齢の上昇(特に40以上)、不妊症(癌、肥満、糖尿病の合併などによる)も影響する。 体外受精と体外受精以外で妊娠した場合に共通することとして、非生産後の妊娠では短いIPIによる合併症リスクは増大しない。

結論

体外受精と体外受精以外で妊娠した場合、どちらも次の妊娠までの間隔は12ヶ月未満と60ヶ月以上の場合に、より高い周産期合併症リスクと関連があった。

今回の論文から、体外受精による妊娠と次の妊娠の間隔が短い場合は、早産などの周産期合併症を起こすリスクが上昇することをよく認識して、1年以上は間隔を空けて治療に当たる必要があることが分かります。


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