論文紹介 2018.05.01
高輪医師部の菊池 卓です。
先月に引き続き、今月もビタミンD不足と不妊症の関連について調べた論文をご紹介せていただきます。
P.Triggianese et al .Vitamin D deficiency in an Italian cohort of infertile women..Am J Reprod Immunol;78:e12733 https://doi.org/10.1111/aji.12733
ビタミンDはカルシウムとリンの吸収を促進し、それにより丈夫な骨をつくる作用が有名ではありますが、近年ビタミンD不足が免疫に与える負の影響と不妊症への関連に注目が集まっております。また、以前よりSLEや橋本病などの自己免疫性疾患に罹患した女性の妊娠率が低いことは知られておりましたが、本研究はビタミンDと自己免疫性疾患と不妊症との関連について検討しております。
期間 | 2013年から2015年にイタリアのポリメディカルセンターを受診された |
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対象 |
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(*ビタミンDそのものは代謝や脂肪組織への以降により大きく変動するため、測定が難しく代謝物である25(OH)Dを測定します)
血清25OHDの基準値に関しては2011年の内分泌学会のガイドラインに基づいて、 20 ng / mL未満を不足とし、7 ng / mLをより重篤な不足としました。
ビタミンDの値は、不妊群が反復流産群および対照群と比べて、有意に低く
25(OH)D不足の患者数は不妊群が反復流産群および対照群と比べて、有意に多い結果となりました
自己免疫疾患については、不妊+非不妊群175人の女性のうち65人に自己免疫疾患を認め、内訳としては甲状腺自己免疫疾患が多く69.2%(45/65)であり、不妊群は非不妊群より自己免疫性疾患の有病率が有意に高いものでした。(52.8%対27.6%、P = 0.0004)。
また、全集団において自己免疫性疾患をもつ女性は、持たない女性と比較してビタミンDの値が低かったです(P=0.04)。
多変量解析を行ったところ、自己免疫性疾患は不妊症のリスクを2.2倍(OR=2.2)に増加させ、ビタミンDを補充することは不妊症のリスクを0.9倍(OR=0.9)に有意に減少させました。
著者らは結論として自己免疫性疾患およびビタミンD不足は、いずれも女性の不妊症の独立した危険因子である。
つまり自己免疫疾患を有する患者さんは、自己免疫疾患とビタミンD不足という二つの不妊原因を抱えていると考えられています。したがって、ビタミンDの補充は特に自己免疫性疾患を有する不妊症女性の妊娠率を改善するために有用であるとしています。
※ビタミンDを補充することで、自己免疫疾患が治癒するということではありません。
補足
ビタミンD不足は不妊の原因になる以外にも妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全の頻度を増加させるとする報告もあります。
また、骨や歯を丈夫にすることは健康増進につながることからビタミンDの不足は改善することが望ましいといえます。
ビタミンDを増やすには①日光浴 ②食事から摂取するの2つの方法があります。しかし、我々現代人にとって①、②ともに難しいです。
そのため当院では御希望があれば、まず採血にて25(OH)Dの測定をさせていただき、低値であればサプリメントの処方を行っております。採血は生理時期に関係なくいつでもできますので、気になる方は担当医にお伝えください。皆様のお問い合わせをお待ちしております。
高輪医師部 菊池
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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