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医療コラム

コラム 2018.04.10

乳ガンと妊孕性温存

今回は、”乳ガンと妊孕性温存”について書かせて頂きます。

日本では女性の乳ガンは増加しており、2011年には女性のガン全体の約20%を占め、胃ガンを抜いて1位になっています。乳ガンは20歳代後半から増加し、50歳代後半でピークを迎えます。特に、40歳代女性では、乳ガンが最も多いといわれています。また、日本の2013年の女性の乳ガン死亡数は約13,000人で、女性のガン死亡全体の約9%を占めており、こちらも年々増加しています。そして、女性の30歳から64歳では、乳ガンが死亡原因のトップとなっています。

食生活の欧米化や晩婚化などの遺伝因子、晩婚化・少子化等の女性のライフスタイルの変化などが原因として指摘されていますが、その他具体的には、女性ホルモン(エストロゲン)が関係しています。一方で、自己健診の普及になどにより早期発見される例も確かです。

症状としては、早期の段階では自覚症状に乏しいとされますが、病期の進行とともに症状が現れます。乳ガンが見つかるきっかけとして、マンモグラフィー等による乳ガン検診で指摘される場合や、自分で症状に気付く場合が多いようです。初期症状では、乳房に痛みを伴わないシコリができることが9割で、残りの1割は乳首から血液混じりの分泌液が出る、乳首や乳輪がただれる、といった症状がみられます。ただし、シコリは乳ガン以外の病気でもみられ、約90%が良性とされているので、専門医で診てもらう必要があります。その他の症状として、ガンの進行とともに乳房にえくぼのような凹みができたり、皮膚の赤みや腫れ、熱っぽさ、乳首の陥没、わきの下の腫れ・シコリといった症状もみられるようです。

乳ガンの治療には、様々な方法があります。手術・化学療法・放射線治療・ホルモン療法が代表的です。それらの選択は専門医との相談が必要です。

乳ガンに限らずガン全体で言える事ですが、早期発見が適切な治療につながり、病気による命の危険の回避や妊孕性の温存につながります。現代においては、検査・治療の進歩により、以前よりもガンを克服できる可能性が高まっています。しかしながら、妊娠可能年齢にある女性患者においては、治療の影響で卵巣機能が低下し、赤ちゃんを授かれない状況になることがあります。赤ちゃんを授かる可能性を残しながら治療する事が、妊娠を希望する女性にとって重要と考えられます。将来子供を授かる可能性を残す事を「妊孕性温存」といいます。

現在、女性ガン患者の妊孕性温存治療には、①卵子を卵巣から取り出し凍結保存する卵子凍結、②取り出した卵子をパートナーの精子と受精させ受精卵を作り凍結保存する受精卵凍結、③卵子を含んだ卵巣組織を摘出し凍結保存する卵巣組織凍結の3つがあり、当院ではすべて①~③に対応しています。最も適した妊孕性温存の方法の選択には、ガンの種類やその進行の程度、治療で選択される薬剤、治療の開始時期、現在の年齢や配偶者の有無等によって決定します。まずは、ガンそのものの治療が大原則ですが、子宮や卵巣等の生殖組織はガン治療によりダメージを受けやすいため、治療開始前から妊孕性温存について考える必要があります。当院では、医師、看護師、カウンセラーの連携により、患者様のサポート体制を整えています。

定期検診を受けずに、何らかの症状をきっかけに発見される場合には、既に進行ガンとなっている事が少なくありません。早期ガンで見つかると、ガンの治療の選択肢が広がり、治療による身体的・経済的・時間的な負担を減らせる可能性があるため、定期的に検診を受ける事が大切です。乳ガン検診は、自治体で実施されているため、その詳細は、お住まいの自治体に問い合わせてみて下さい。加えて、早期発見に努めるためにはセルフチェックも非常に大切です。セルフチェックを行う時期は、閉経前の方は乳房が柔らかくなる月経終了後1週間~10日の間に、閉経後の方は一定の日にちを決めて、毎月1回行いましょう。具体的なチェックのポイントと方法は、下記URLをご覧ください。

乳がんセルフチェック | 乳がんと早期発見 | 乳がんを学ぶ | がんを学ぶ

対象年齢外となる20代頃から、月に1度は自分で乳房を見て触って変化を確かめるなど、日頃から自分の身体と向き合い、ガンの早期発見に努めていきましょう。

参考・引用文献

仙台看護部 沼田、高橋


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診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)

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