論文紹介 2018.04.03
当院では2018年1月より、全症例タイムラプスシステムを用いて、特に重要と言われる受精確認から第1分割までの観察を重点的に受精卵(胚)の観察をしております。タイムラプスとは胚の成長を連続して観察することができる装置で、成長の過程で起こる重要な現象を見逃すことなく培養することができます。
通常の観察方法では、約10〜15%の受精卵において前核が消失しており、受精しているかどうか、正常受精しているかの判断が難しいというデメリットがありますが、タイムラプスを用いることで前核の確認を確実に行うことが可能です。 また、「異常な分割(ダイレクト分割、リバース分割、不明瞭な分割など)」や1つの割球に複数の核が出現する「多核」の発見も可能です。
更に、分割時間を細かく記録できるため、そのデータを元に様々な分析をすることもできます。
今回ご紹介するのは、タイムラプスで観察された「異常な分割」「多核」「発生速度」によって胚の発生能および倍数性(染色体数が正常であるか)が予測できるのか?という論文です。2018年にアメリカから発表された論文です。
【論文タイトル】
Are cleavage anomalies,multinucleation,or specific cell cycle kinetics observed with time-lapse imaging predictive of embryo developmental capacity or ploidy?
【雑誌名】
Fertility and Sterility 2018
【著者】
Nina Desai et al.
2012年~2016年にアメリカ オハイオ州のクリニックでICSI(顕微授精)を行い、胚盤胞でPGS(着床前スクリーニング)を行った130名の患者。患者平均年齢は36.3±4.3歳。
※現在、日本ではPGSは認可されておりません。
異常な事象 | 拡張胚盤胞率 | P値 | 染色体正常率 | P値 |
---|---|---|---|---|
なし | 68.4% | - | 43.0% | - |
多核 | 65.2% | NS | 42.3% | NS |
リバース分割 | 57.7% | NS | 52.6% | NS |
ダイレクト分割 | 34.0% | 0.0001 | 50.0% | NS |
不明瞭な分割 | 52.6% | 0.01 | 40.4% | NS |
複数あり | 48.6% | <0.05 | 27.6% | <0.05 |
時間 | 染色体正常率 | P値 |
---|---|---|
tSB | ||
< 96.2h | 48.1% | <0.05 |
≧96.2h | 37.6% | |
tEB | ||
≦116h | 46.8% | <0.01 |
> 116h | 30.0% | |
tEB-tSB | ||
≦13h | 47.7% | <0.01 |
> 13h | 31.5% |
これらの結果より、異常な事象及び後期胚の発生速度(通常、培養4日目~6日目で胚盤胞になります)によって染色体正常率が異なることが分かり、タイムラプスを用いた観察の重要性が示されました。
京野アートクリニックでは、希望性(有料)になりますが、受精から6日目までの胚発育過程の動画をUSBに入れてお渡しし、3日目初期胚もしくは胚盤胞までの分割時間等により良好胚を選択する際の指標となるKIDScoreの解析を行い、報告書を作成・説明しております。 詳細はスタッフにお申し付けください。
高輪培養部 相良
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
7:30〜16:30 (最終予約 15:00) |
AM のみ |
03-6408-4124
お電話 受付時間 |
|
---|