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医療コラム

コラム 2018.02.20

甲状腺ホルモンと妊娠について(仙台看護部)

今回は看護部より、部署で行った勉強会・甲状腺ホルモンと妊娠について紹介します。

甲状腺は、のどぼとけのすぐ下にある蝶が羽を広げたような形をしている重さ10~20g程度の小さな臓器です。甲状腺ホルモンの主要な構成成分はヨウ素です。甲状腺ホルモンは神経の増殖と成長に必要です。

  • 甲状腺のホルモンが多すぎると(甲状腺機能亢進症)、汗を沢山かいたり、食欲旺盛なのに体重が減る。活発になっているのに疲れやすく、動機が1日中する。などの症状がでます。
  • 甲状腺のホルモンが少なすぎると(甲状腺機能低下症)、寒気がしたり、皮膚が乾燥したり、食欲がないのにも関わらず体重が増える。体がだるく、無気力となり、いつも眠気を感じるようになる。などの症状がでます。

甲状腺ホルモンは胎盤を通して胎児に移行し、胎児の知能を含めた身体発育に極めて重要な働きをします。軽度の母体甲状腺ホルモン不足があると胎児発育および妊娠経過に悪影響(流産・早産など)を及ぼします。

2007年には世界保健機関(WHO)はヨウ素欠乏症が胎児の脳にダメージ(知能低下など)をもたらすことを発表しました。2013年には英国のALSPACスタディーは妊娠初期のヨウ素欠乏症とIQ低下の関連を報告しています。妊娠中のヨウ素欠乏症は、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の要因になり、知能低下や運動機能障害をもたらします。

明らかな甲状腺機能異常があると不妊となるリスクや流産率が高くなります。潜在性甲状腺機能低下症(軽度の甲状腺ホルモン不足、FT3・FT4は正常だがTSH高値の状態)でも不妊、流産につながります。不妊症の10人に1人は潜在性甲状腺機能低下症を合併していると言われています。米国臨床内分泌学会/米国甲状腺学会、欧州甲状腺学会では妊娠前と妊娠初期のTSH値を2.5μU/ml未満にするよう推奨しています。

また、最近では体外受精を受ける潜在性甲状腺機能低下症患者では、甲状腺ホルモン剤治療により受精率、胚の質、妊娠率が上昇するとの報告もあります。

不妊治療・検査が甲状腺機能に与える影響として、子宮卵管造影検査があります。

卵管の疎通性を確認する検査で、女性の不妊原因のうち、最も多いといわれる卵管性不妊の検査として非常に有効であるほか、この検査の実施後には、卵管の通りが良い状態になっているため、妊娠率が上昇するという報告があります。

しかし造影剤にはヨードが含まれているため、子宮卵管造影検査後、血中ヨウ素濃度は上昇し、それに伴いTSH値が上昇します。検査後4週で有意に高く12週をピークに下がり始めますが24週でも有意に高く48週間後に検査前と差がなくなります。少なくても検査後、半年間は高濃度ヨードに暴露されるため甲状腺機能に異常が出ることが多いため。潜在性甲状腺機能低下症が疑われる場合には、注意が必要です。

当院では必ず子宮卵管造営検査の前に、各ホルモン値の検査をした上で実施しており、甲状腺機能異常が疑われる場合には、他の医療機関と連携して、治療をしていくことになります。

参考文献

  • 不妊・流早産と甲状腺異常~潜在性甲状腺機能低下症合併不妊症への対応~
    医療法人 神甲会 隈病院 学術顧問 網野信行
  • 日本甲状腺学会ランチョンセミナー 不妊クリニックとの医療連携
    すみれ甲状腺グループ代表 浜田昇

仙台看護部


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