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医療コラム

論文紹介 2024.09.09

日本受精着床学会 第11回優秀論文賞受賞

こんにちは。仙台培養部の齋藤です。

この度、私が執筆しました論文「早期の妊娠成立のための至適採卵数」が優秀論文賞をいただきましたので、その内容をご紹介したいと思います。

 

不妊治療において、2023年6月より保険診療が可能となり、経済的負担が軽くなりました。しかし、回数制限や年齢制限もあり、何度も行えるわけではありません。また保険診療を利用するしないに関わらず、身体的、経済的負担を軽減させるために、少ない回数で早く妊娠までたどりつくことが重要になってきます。

 

そこで今回の論文では、採卵数が何個あればより短期間で妊娠することが出来るかを、当院で始めて採卵した方を対象とし比較しました。

 

  • 採卵数5個以下

新鮮胚移植をすることで妊娠までの期間を一番短くすることが出来ます。しかし一方で、採卵数が少ないので、移植ができなかったり、凍結胚を1個も得ることが出来ないという確立が大幅に上がってしまいます(採卵数5個以下で27.4%、採卵数6個以上だと6.1%)。

 

  • 採卵数10個以上

採卵数が少ない場合と比べると、多数の凍結胚を得られる可能性が高くなります。しかし、採卵数を多くするために、たくさんの薬を使って卵巣を刺激することや、若年齢や高AMH値の方が多いため、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症するリスクが高くなります。特に、採卵数が16個以上で高くなります。

OHSSは軽症だと数日で自然に解消されます。しかし、妊娠後では長期化したり、更に重度になると嘔気、嘔吐、呼吸困難、また腎不全、血栓症などの合併症まで引き起こします。そのため、OHSSを回避することはとても重要になってきます。

 

  • 採卵数6~9個

OHSSの発症を抑えつつ、新鮮胚移植を行うことができるため、短期間での妊娠を目指すことが出来ます。さらに、凍結胚も得られる可能性が高くなます。

 

このことから、今回の当院の結果では、移植のキャンセルやOHSSのリスクを考慮したうえで、採卵数6~9個が最適であると考えられます。

 

  • 採卵個数ごとの累積妊娠率と妊娠までの期間

 

累積妊娠率とは、1度の採卵で採れた卵子を新鮮胚移植または凍結融解胚移植し、1度でも妊娠した割合になります(棒グラフ:左側の目盛り)。

線グラフ:右側の目盛りは、採卵から妊娠までにかかった期間になります。

採卵数が多くなるにつれて、累積妊娠率は上がりますが、妊娠までの期間は、採卵数5個を超えるとあまり変わらなくなります。

 

※注意点

今回のデータには、一番初めの採卵しか含まれておりません。移植に使える胚がなかなか得られない、何度移植をしても妊娠しない(ART反復不成功)症例では、やはり妊娠までの期間は長期化してしまいます。

一方で、OHSSの発症に十分に気を付けたうえで、卵巣予備能力が高い方や、多数の卵子を得ることができる方であれば、採卵数10個前後を目指すことで、複数個の凍結胚を得ることができます。そして、一度の採卵で二人目、三人目の計画をすることが可能となります。

 

  • 最後に…

今回の論文では、採卵数6~9個が短期間の妊娠を目指すことができる個数となり、なおかつ、凍結胚を得ることが出来るという結果になりました。

しかし、この結果はあくまでも参考程度にお考えください。当院では、一人一人の希望に沿った治療を提案しながら、安全で、最適な治療方法を提供できればと考えております。

気になることがありましたら、ぜひお気軽にスタッフにおたずねください。

 

京野アートクリニック仙台

培養部 齋藤 瑞穂


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