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医療コラム

論文紹介 2024.09.16

コラム:人工知能を用いた胚スコアリングシステムiDAScore®について

胚培養士の宮本です。

今回は人工知能(AI)による深層学習を用いた胚スコアリングシステムiDAScore®について、論文紹介いたします。

 

iDAScore®はEmbryoScope+™というタイムラプスインキュベーターに搭載されている、胚(受精卵)にスコアを付けるシステムです。タイムラプスインキュベーターでは胚の写真をおよそ10分に1度撮影し、パラパラ漫画のように胚の発育過程を動画として観察することができます。

iDAScore®は1.0から9.9点までのスコアが自動的に胚に付けられ、高スコアほど高妊娠率であるというコンセプトのもと開発されました。全世界の体外受精施設から胚データを集めたことから、汎用性の高いシステムとして注目されています。

 

iDAScore®は現在2つのモデル(v1.0、v2.0モデル)が開発、リリースされており、従来の形態(胚の見た目)の評価と同等、もしくはそれよりも優れた妊娠予測性能を持つという報告がされています。

主に胚盤胞期の胚を対象としておりますが、現在当院で使用している新しいv2.0モデルでは分割期の胚にもスコアが付けられるようになっております。

 

このコラムでは、iDAScore®の胚盤胞期における妊娠予測性能について、海外の論文から結果を一部抜粋してご紹介いたします。

 

表1. 施設数、深層学習した胚数

v1.0モデル v2.0モデル
開発用データ収集施設 18施設 22施設
全解析胚数 11万5832個 18万1428個
妊娠の有無が

判明している胚数

1万4644個 1万6762個

(分割期胚含めると3万3687個)

 

表2. 妊娠予測性能の比較(胚盤胞期):複数のデータ収集施設

妊娠予測性能の指標(AUC)※
KIDScore™ D5 0.645
iDAScore® v1.0 0.672
iDAScore® v2.0 0.694

※0.5~1.0の数値の間で、1に近いほど性能が良いという指標

データ元:Lassen JT, et al, Sci Rep. (2023) Table.2より一部改変

 

表1と2より、v2.0モデルは解析胚数が多く、妊娠予測性能は培養士が胚の発育過程を手動で入力した情報をもとに得られるKIDScore™やv1.0モデルよりも高いことが分かりました。

 

表3. 妊娠予測性能の比較:単一施設における比較

妊娠予測性能の指標(AUC)
形態評価(Gardner分類) 0.702
iDAScore® v1.0 0.720
iDAScore® v2.0 0.736

データ元:Ueno S, et al, Reprod Biomed Online. (2024)  Table.4より一部改変

 

表3では、一つの施設のデータをもとに研究された結果で、形態評価よりもiDAScore®、特にv2.0モデルで妊娠予測性能が高いことを報告しています。

 

胚の成長の過程において見られる現象のうち、妊娠に関連する因子は多く存在しますが、その中でもより妊娠に強く関わる因子との関連性も解析されています。

ダイレクト分割やリバース分割などの異常分割がある胚ではスコアが低く、胚盤胞まで成長する速度がはやい胚ほど高スコアという結果が出ています。また、従来の形態評価で良好な形態ほど高スコアでした。

(Jørgen Berntsen, et al, PLoS One. (2022)より)

 

胚の形態評価は主観性が高く、評価が完全に一致することはほぼありません。そして形態評価が良くとも妊娠に至らない胚も存在します。

また、形態評価以外にも妊娠に関連する発育過程の現象を調べることは、非常に労力のかかる作業で、かつこれも主観的な評価となります。

iDAScore®はAIを用いて着床した胚の形態や発育過程などの情報を深層学習し、着床した胚と類似した発育過程をたどった胚には高スコアを付けるため、iDAScore®の利点は高い客観性と全自動でスコアが出る利便性であると言えます。

ただし女性の年齢や体外受精施設の培養環境などがスコアに影響する可能性があるため、現時点ではiDAScore®はサポートツールとしての使用が望ましいと思われます。

例えば、当院では同一評価の胚盤胞がある場合に高スコアのものを優先的に胚移植することを提案するなどの対応をしております。

 

次回のコラムでは、当院におけるiDAScore®と妊娠率との関連性について、第42回日本受精着床学会にて報告してまいりましたので、その発表の内容をご紹介したいと思います。

 

京野アートクリニック仙台

培養部 宮本 若葉

 

引用論文

1) Berntsen, J., Rimestad J., Lassen, JT., Tran, D., Kragh, MF.: Robust and generalizable embryo selection based on artificial intelligence and time-lapse image sequences. PLoS One., 17:e0262661, 2022

2) Lassen, JT., Kragh, MF., Rimestad, J., Nygard, M., Berntsen, J.: Development and validation of deep learning based embryo selection across multiple days of transfer. Sci Rep., 13:4235, 2023.

3) Ueno, S., Berntsen, J., Okimura, T., Kato, K.: Improved pregnancy prediction performance in an updated deep-learning embryo selection model: a retrospective independent validation study. Reprod Biomed Online., 48:103308, 2024.

 

 


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