論文紹介 2024.10.22
当院は30年近く不妊治療を行っておりますので、長期的に凍結物を保管してまいりました。
実際の治療においては、卵巣刺激を行い、複数の受精卵を得た上で胚移植し、余剰胚は凍結することが頻繁にありますし、
幸いにもはじめの胚移植で妊娠ということになると、この余剰胚を長期間保管し、一段落した時に二人目の治療のために使用するということも多くあります。
また、医学的な妊孕性温存や、最近よく取り上げられる卵子凍結においても、長期保管、というのは欠かせないもので、
凍結=安全、であるかどうかの検証は大変重要な意味を持ちます。
今回、仙台院の培養部を中心に執筆した論文が、日本受精着床学会という権威ある学会誌に採択されましたので簡単に紹介させていただきます。
【概要】
受精卵の長期凍結保存が融解後の臨床成績に及ぼす影響を調べることを目的とし,2014~2021年に単一凍結胚盤胞移植を実施した凍結時年齢39歳以下の症例を対象に,凍結保管年数別 (A: 0~3年,B: 3~5年,C: ≥5年)に臨床成績,出生児所見を後方視的に検討した。
統計学的解析はSteel-Dwass検定,χ二乗検定またはFisherの正確検定を使用しp<0.05で有意差ありとした。胚生存率はA: 98.6% (6554/6650),B: 97.6% (738/756),C: 95.4% (166/174)で,A群と比較しC群で有意に低かった。
出産率はA: 40.5% (2663/6580),B: 35.9% (254/707),C:31.9% (46/144)で,A群,B群と比較し,C群で有意に低かったが,良好胚のみに限定すると,A: 47.0% (1947/4141),B: 45.5% (153/336),C:40.0% (20/50)で差は認めなかった。
在胎週数,妊娠糖尿病の発症率を除き,母体周産期異常の発症率に差は認めず,出生児先天異常率は,A: 1.6% (42/2641),B: 1.2% (3/252), C: 2.5% (1/40)で,差は認めなかった。
長期凍結保存が,融解後の胚生存性と臨床成績に与える影響の解明のためには今後も長期的な検討が必要である。
※ここまで※
今後も長期的な検討が必要になります。
5年以上の長期保存ということになると、技術レベルや環境も5年以上前のものとなるため、単純に現時点のものと簡単な比較がしづらい部分があります。
それほどに培養環境、凍結技術は著しい成長をしています。
出生率については、有意差を認めていない、ということは安心材料ではあります。
凍結技術の向上と研究を今後も継続していきます。
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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