医療コラム

2024年11月15日～17日に開催された、The 8th World Congress of the International Society for Fertility Preservation(ISFP2024)に参加してまいりました。

私は、「Analysis of 130 births from cryopreserved oocytes at four reproductive centers（4つの生殖補助医療施設における凍結卵子からの130症例の出産の分析）」という演題でポスター発表を行いました。その内容を簡単にご紹介します。

卵子凍結保存技術の向上により、新鮮卵子を用いた場合と同等の臨床結果が得られています。卵子凍結保存の有効性に関する報告は数多くある一方、凍結保存した卵子から生まれた児の追跡調査や性別に関する報告は少ないです。

そこで、2000年8月から2024年1月までに、京野アートクリニック盛岡、仙台、高輪、品川で行われた卵子凍結保存、卵子融解、顕微授精、胚移植による出生130例について、生後0か月、3か月、6か月、9か月、12か月、18か月、24か月、36か月、48か月、60か月、72か月に郵送されたアンケートを用いて、成長と児の発達の分析を行いました。

【結果】

患者背景は、非医学的卵子凍結126例、医学的卵子凍結4例でした。医学的卵子凍結症例は、乳がん2例、急性リンパ性白血病2例でした。

こちらは、130症例の卵子凍結の実績をまとめた表です。

当院では、日本産科婦人科学会登録施設として、出産された方を対象に出産・予後調査のご協力をお願いしております。アンケートは，母子手帳とほぼ同じ内容の質問項目に答えていただいております。

凍結卵子から生まれた116例の児(Takeshige et al., Reprod Biomed Online. 2021;42:564-571.)の調査結果によると、未回答で返送されたアンケートもありましたが、0か月～72か月それぞれの発達段階において、ほぼすべての回答に問題はなく、自然妊娠で生まれた子供と変わらない発育していることが確認されております。

こちらは凍結卵子から生まれた児の身長、体重推移です。

厚生労働省が全国平均として公表している標準成長曲線内に位置しており、6歳まで自然妊娠の子供と発達の差は見られませんでした。

今回の結果からは、卵子凍結は身体的異常や先天異常には影響していないことが示唆されましたが、今後さらなる調査が必要であると考えます。

当院で行っている非医学的卵子凍結(社会的卵子凍結)、医学的卵子凍結は、ライフステージ、医療上のニーズに応じて凍結をしております。医学的卵子凍結は、原疾患の治療が遅滞なく行われるように、限られた期間の中で最大限の凍結が出来るよう努めております。京野アートクリニック盛岡・仙台・高輪は、それぞれの施設で社会的・医学的卵子凍結が可能です。

卵子凍結を実施するか迷われている方がいましたら、まずはお近くの施設を受診していただき、メリット・デメリットを含めご理解・ご納得された上で選択されることをお勧めしております。今回のコラムにて、卵子凍結という選択肢があるということを知っていただければと思います。

京野アートクリニック盛岡

看護部　藤田美琴