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医療コラム

学会報告 2024.12.03

「胚培養士が持つもう一つの役割」 クリニックが学術活動を行う理由

こんにちは、胚培養士の服部です。

 

11月中旬に日本生殖医学会と国際妊孕性温存学会が開催され、2024年の主な学術集会が盛会のうちにすべて終了しました。

当院は1995年の開院以降、生殖補助医療における新たな知見を広げるべく、毎日の診療と並行して研究活動を行い、その成果について積極的に論文や学会で発表を行ってまいりました。2024年も仙台、高輪、盛岡の各院から国内外の学術誌や学術集会で多くの研究成果を発表することができ、新しい知識を世界中の生殖補助医療に関わる医療従事者や研究者と共有することができましたので、そのご報告をさせていただきます。

 

以下のリストは当院の胚培養士が2024年に発表した学術活動の内容をまとめたものです。

 

【国際論文誌】2

J Assist Reprod Genet. 41, 1589–1596.

  • The utility of human two plus one small pronucleated zygotes (2.1PN) based on clinical outcomes and the focused ploidy analysis.

Fertility & Reproduction. 06, 100-106.

  • Clinical outcomes of frozen-thawed single blastocyst transfers in relation to blastocyst diameter and timing of cryopreservation.

【国内論文誌】1

日本受精着床学会雑誌41, 262-267.

  • 5年以上の長期胚盤胞凍結保存が臨床成績, 出生児に与える影響.

【国際学会・一般演題】3

アジア太平洋生殖医学会(ASPIRE) 2024

  • Perinatal outcomes of assisted reproductive technology in cancer survivors. (口頭)

アメリカ生殖医学会(ASRM) 2024

  • Is iDAScoreTM v2.0 useful for predicting pregnancy in frozen blastocyst transfer? (ポスター)

国際妊孕性温存学会(ISFP) 2024

  • First report of ovarian tissue cryopreservation for a 6-year-old girl with non-mosaic Turner syndrome (45, X) in Japan: a case report. (ポスター)

【国内学会・依頼演題】4題 ※学会などから講演を依頼された演題

第29回日本臨床エンブリオロジスト学会

  • タイムラプス型インキュベータを用いた胚評価について
  • 染色体倍数性解析から見えてきた 1PN、1PN 胚の取り扱い

第27回日本IVF学会

  • 40歳以上の体外受精におけるラボからのアプローチ

第69回日本生殖医学会

  • 高濃度ヒアルロン酸含有培養液UpToDate~組成解析と新たな選択肢~

【国内学会・一般演題】11

第14回日本がん・生殖医療学会

  • がんサバイバーにおけるARTが周産期予後に及ぼす影響について(口頭)

第65回日本卵子学会

  • トレハロース、キサンタンガム添加ガラス化凍結保存液の臨床的有用性の検討(口頭)
  • 組成の異なる融解試薬における卵子融解への臨床成績の影響(口頭)
  • ノンメディカル卵子凍結の現状および卵子融解による妊娠成績の検討(口頭)

第42回受精着床学会

  • iDAScoreTM0を用いた胚盤胞移植における妊孕予測能検討(口頭)
  • 生成AIの実務活用による培養室業務の効率化①,②(口頭)
  • Cox比例ハザードモデルを用いたtime to pregnancy短縮の要因探索(口頭)

第61回東北生殖医学会

  • トレハロース、キサンタンガム添加ガラス化凍結保存液の臨床的有用性の検討(口頭)
  • AIHの累積妊娠率と卵巣刺激の有無による妊娠率の検討(口頭)

第69回日本生殖医学会

  • ベイズ推論と最尤法から見るiDAScore v2.0の胚盤胞予測の精度検討(ポスター)
  • iDAScore v2.0における初期胚評価とスコア変動を考慮した予測精度の検討(ポスター)

【その他講演】4

オーストラリア、ニュージーランド生殖医学(FSANZ)2024 Launch events ES Club Pacific(主催 Vitrolife)

  • Time lapse management across four clinic sites.

The 7th Clinical Embryology Seminar(主催 メルクバイオファーマ)

  • 凍結卵子の利用状況と臨床成績について

医療機関向けWebセミナー(主催vivola)

  • 生成AI(Chat GPT)の実務活用による培養室業務の効率化
  • 早期の妊娠成立のための至適採卵数

 

 

研究=大学や企業で行うものというイメージもあるかと思いますが、当院のようなクリニックの規模で研究活動を行うことにも大きな意義があります。

  1. 知識の共有と生殖医療の進歩への貢献

実際の診療現場での知見を発表することで、他の医療従事者や研究社と知識を共有し、医療技術や知識の発展に貢献することができます。また、生殖医療は技術革新が速いため、学会発表や論文発表での情報交換や最新技術の導入促進が治療成績の向上に直結します。

  1. 医療スタッフの自己研鑽の機会

発表準備では、数多くの論文を読むことになるため、自らの研究を通して基本的な知識や最新の知識をより深く理解することができ、それらは日々の診療にも活かされます。「エビデンスに基づく医療」という言葉がありますが、自分自身の価値観だけではなく、エビデンス(証拠)も十分理解した上で患者さんへの説明や治療を提供することが大事であると考えています。

  1. クリニックの信頼性向上

新たな知見を見つけ出すことや最新の知識や技術に基づいて診療することで、クリニックが専門的で高水準の医療を提供していることを証明できると考えています。また、自施設の成果を発表することで、他施設との比較やフィードバックを受ける機会を得ることができます。

 

我々、胚培養士(エンブリオロジスト)は卵子や精子、受精卵を扱う医療技術者であると同時に研究者として学術活動を行うという側面も持っています。当院では博士号を持つ管理胚培養士(胚培養士の上級資格)をはじめ、学術活動の経験豊富なスタッフが、生殖医療の発展に貢献すべく研究活動を積極的に行っております。

 

日々の業務の中での「小さな気づき」を大切にし、患者様一人一人が最良の治療結果が得られますよう、これからもクリニック一丸となって取り組んでまいります。

 

培養部部長 服部


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診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)

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