コラム 2025.01.23
不妊治療の反復不成功の原因にはいくつもの因子が考えられ、それらが複雑に絡まり合っています。明らかに流産や着床不全を一定の確率で起こしてしまうものもあれば、その因子を持っていたからと言って全ての人が妊娠しにくいことになるわけではないものもあります。
しかしながら、それらの影響力がそのカップルにどのくらい重くのしかかるものなのかを測定することは困難です。
そういった場合は、我々はまずどんな因子があるのか、そしてその対策をどのようにするのかを考えます。つまりもぐらたたき的に一つ一つ解決していき、少しでもいい環境でARTを行うことが出来ることを目指します。
男性側で考えられる原因をいくつか挙げてみます。
精子DNA断片化(DFI:DNA Fragmentation):精子のDNA損傷が高いと、受精後の胚の正常な発育が妨げられ、着床や妊娠維持が困難になる。主な原因としては酸化ストレス、精巣環境の異常、精索静脈瘤、加齢など。
精子数および運動性の重度低下:精液中の精子数や運動性が著しく低い場合、ICSIでも受精率が低下する可能性がある。
異常精子形態(Teratozoospermia):精子の形態異常率が高いと、卵子との融合や受精後の胚発育に影響を与える。
染色体変異や遺伝子変異
概要: 精子の染色体変異(例: 転座、構造異常など)や遺伝子異常(例: 、AZFc全欠失など)が、受精や胚発育に悪影響を与える。
等があります。染色体変異、遺伝子変異などは治療できるものではないので、出生前診断や着床前診断などで対策をしていくことになります。
精子が極端に少ない方や、形態の悪い方も受精率は下がります。そのため良い精子を選ぶためにICSIを行ったり、男性側は精索静脈瘤の治療や内科的な治療、場合により精巣内精子を使ったICSIなども行ったりします。
今回は精子のDNAの断片化についてまとめていこうと思います。
そもそも精子のDNA断片化とは何なのでしょうか。
下の図のようにDNAは二重らせん構造で出来ており、遺伝情報を持っています。イメージとしてはからだを作ったり、うまく動かしたりするプログラムのようなもので、多少のエラーがあっても問題ありませんが、大きなエラーやたくさんのエラーが発生するとうまく動かなくなってきます。
DNAに起こっていることを挙げると専門用語になりますが、DNA鎖の切断、塩基の変異、クロスリンクの形成、ヒストン置換の異常、エピジェネティックな異常などです。これは説明すると長くなるので省きますが、プログラム(DNA)が壊れてうまく動かなくなる(受精や発生が正常に起こらない)イメージを持ってもらえればいいかと思います。
精子のDNAが損傷している場合、対策が可能です。
基本的にはより正常な良い精子を回収し、治療に用いることが大命題です。
手段はおおきく2つに分かれます
①現在の精子の中で出来るだけ損傷の低いものを選択する
②精子自体を良くして、DNAの損傷率を下げる。
次回以降はこの2つの方法について説明していこうと思います。
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
7:30〜16:30 (最終予約 15:00) |
AM のみ |
03-6408-4124
お電話 受付時間 |
|
---|