コラム 2025.02.10
女性の低BMIが生殖能力に悪影響を及ぼすことは多くの論文で示されています。男性は肥満は悪影響があるとする論文はたくさんありますが、痩せについて論じているものはあまり見かけません。
痩せでなくても、最近の急激なダイエットや、ボディビル・格闘技などで行われる強い減量についても影響がありそうなのでいくつか論文を調べてみました。
低BMIはWHOの基準で18.5以下とされています。
低BMIと精液所見は関連がないとする論文が見られる一方で、BMIがあまりにも低いと精液所見の悪化のリスクが高くなるとしている論文もいくつか認められます。下の図はBMIごとに精液所見が低下するオッズ比(起こりやすさ)を示しています。1) BMI18.5-24.9の通常体型を基準として、数値が上がるほど精液所見の悪化が起こりやすいと考えていただければいいと思います。
このグラフでは普通体型が最も精液所見悪化がおこりにくく、BMI<18.5もBMI≧40も精液所見の悪化が起こりやすくなっています。
また極端に痩せている男性は、ホルモンや栄養の問題が見られることがあります。低体重により、テストステロンレベルの低下、精巣機能の低下などが起こる可能性があります。
加えて、痩せ型の人は精索静脈瘤の罹患率は通常体型よりも30%高く、精液所見に影響が出ることがあります。2) また痩せの原因として甲状腺機能亢進症なども考えられ、あまりにも体重が増えにくく、疲れやすい方は一度検査をお勧めします。
前にも述べたように、栄養失調の状態ではホルモンの異常が出たり、精巣機能の低下がみられる可能性があります。急激に体重をへらすダイエットは栄養失調の状態を起こしやすく、精液所見への影響が懸念されます。
仮にボディビルや、ボクシングのように一見たくさんの筋肉がついていても、減量や脱水などで栄養失調の状態に陥れば健康を損ない、死に至る場合もあります。そんな状態の時に満足に精子が産生されるのは難しいのでないでしょうか。
牛の研究ですが、72時間の絶食で精子の異常と精液量の低下、陰嚢の萎縮が見られるとありました。3)
前の運動編でも書きましたが、あまりに強度の高いトレーニングは精液所見に悪影響を及ぼすと言われます。
痩せることも難しいですが、痩せている方が太ることもなかなか難しいと言われます。痩せていても、もちろん今の体形で体調がよく、健康であり、精液所見も問題なければ何もいうことはありません。
しかし、痩せていて精液所見が悪い、減量してから精液所見が悪い、疲れやすい方などは栄養の調整や、精索静脈瘤の診察、ホルモンの検査をすることで改善する方法が見つかる可能性があります。
気になる方はご相談ください
1) Sermondade N, Faure C, Fezeu L, et al. BMI in relation to sperm count: an updated systematic review and collaborative meta-analysis. Hum Reprod Update 2013;19:221–31.
2) Xiao-Bin G, Fang-Lei W, Hui X, Cheng Y, Zhi-Xuan C, Zhi-Peng H, Cun-Dong L, Wen-Bin G. The association between body mass index and varicocele: A meta-analysis. Int Braz J Urol. 2021 Jan-Feb;47(1):8-19. doi: 10.1590/S1677-5538.IBJU.2019.0210. PMID: 32271509; PMCID: PMC7712683.
3) Oke, Olusola & Ajala, Oluwatoyin & Oyeyemi, Matthew & Kadiri, A.. (2003). The Effect of Starvation on Scrotal Circumference and Morphology of Spermatozoa of West African Dwarf Goat Buck. Tropical Veterinarian. 21. 10.4314/tv.v21i2.4474.
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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