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医療コラム

コラム 2025.02.10

保険診療で正しい男性不妊治療を 薬のはなし② バイアグラの意外な効果

ゲームチェンジャーだったバイアグラ

皆さんは「バイアグラ」と聞くとどんなイメージでしょう。何となく体に負担がありそう、飲んで大丈夫なのか、ともすれば下品な印象を持つ人もいるかもしれません。
しかしPDE5阻害薬と言われるこれらの薬は、勃起障害(ED)に対する治療に光明をあてました。それまでは漢方や、メンタル薬などのED治療薬も目に見えた効果はなく、陰茎に注射をするもの、真空勃起装置、外科療法など合併症や危険性の多いものも多くみられました。
しかし、1998年3月に初めてのED治療薬として1998年5月4日のTIME誌の表紙を飾ったのちにバイアグラは世界に広まり、安全で効果の高いED治療薬として名をはせていきました。

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バイアグラの作用

バイアグラをはじめとするPDE5阻害薬は、末梢の血管(体の末端の血管)を広げる効果があります。バイアグラを飲むと顔が熱くなったり、のぼせた感じがするのはそのためです。当初は心臓の負荷をとる薬として開発されましたが、勃起が強くなるとわかり、ED治療薬に方向転換しました。
現在でも肺高血圧症という、子どもの病気の治療に効果を上げていますし、シアリスは排尿障害の治療薬としても使われています。
末梢の血流が良くなると言われると、他のことにも効果があるように感じます。

EDと不妊の関係性

いくつかの研究でEDと男性不妊の関係性が示されています。不妊カップルの34.9%が軽度のEDであり、2.6%が重度のEDとしています。1) また、不妊男性は妊娠に問題の無い男性と比較して、EDのスコア(IIEF-5:低い方が勃起が悪い)が有意に低いうえ2)、性交渉の頻度が少なくタイミング法の失敗のリスクが高いとしています。3)
さらに妊娠を希望しているカップルは通常のタイミングにかかわらない性交渉の頻度が下がり、かえってEDなどを引き起こす可能性が高いとする報告もあります。4)
バイアグラはそれらの問題を解決しえ、不妊治療中のED治療の重要性がこれらの報告で示されています。

思いがけない効果

まず、PDE5阻害薬が精子に悪影響を与えないことは明らかになっています。そのうえ、不妊男性の精子の運動率、形態を有意に改善させたという報告もあります。5) またバイアグラを内服することで精子と卵子の透明帯の接合がの向上がみられたという報告もあります。6)
また女性にも効果を示すこともあり、バイアグラによって子宮内膜の厚さが有意に増加したという報告があります。残念ながら着床率、化学的妊娠率までは有意に上昇しなかったようですが、内膜の育ちにくい患者さんに対しては移植の治療成績を改善させる可能性があります。7)

今後のPDE5阻害薬の可能性

PDE5阻害薬は抗酸化作用、抗炎症作用、血管内皮細胞の保護作用、免疫応答調節作用などがあるといわれています。これらの効果は生活習慣病の改善からCovit-19の合併症の治療の一助になるという報告もあります。8)
今後、動脈硬化や認知症の予防、アンチエイジングへの効果が報告されていくと思われ、注目していこうと思っています。

1) Yang B, Xu P, Shi Y, Xu J, Zheng L, Li H, et al. Erectile dysfunction
and associated risk factors in Chinese males of infertile
couples. J Sex Med. 2018;15:671–7.

2) Pan BC, Xing X, Li P, Guo RH, Du Q, Liang X, et al. [Impact of
perceived male infertility factors on penile erectile function].
Zhonghua Nan Ke Xue. 2013;19:1087–90.

3) Perlis N, Lo KC, Grober ED, Spencer L, Jarvi K. Coital frequency
and infertility: which male factors predict less frequent coitus
among infertile couples? Fertil Steril. 2013;100:511–5.

4) Wincze JP. Psychosocial aspects of ejaculatory dysfunction and
male reproduction. Fertil Steril. 2015;104:1089–94.

5) Tan P, Liu L, Wei S, Tang Z, Yang L, Wei Q. The effect of oral phosphodiesterase-5 inhibitors on sperm parameters: a metaanalysis and systematic review. Urology. 2017;105:54–61. 4. Wincze JP. Psychosocial aspects of ejaculatory dysfunction and male reproduction. Fertil Steril. 2015;104:1089–94.

6) du Plessis SS, de Jongh PS, Franken DR. Effect of acute in vivo sildenafil citrate and in vitro 8-bromo-cGMP treatments on semen parameters and sperm function. Fertil Steril. 2004;81:1026–33.

7) Sher G, Fisch JD. Effect of vaginal sildenafil on the outcome of in vitro fertilization (IVF) after multiple IVF failures attributed to poor endometrial development. Fertil Steril. 2002;78:1073–6.

8) Mostafa T. Could Oral Phosphodiesterase 5 Inhibitors Have a Potential Adjuvant Role in Combating COVID-19 Infection? Sex Med Rev. 2021 Jan;9(1):15-22. doi: 10.1016/j.sxmr.2020.08.006. Epub 2020 Sep 8. PMID: 33077403; PMCID: PMC7833179.


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