論文紹介 2025.02.28
こんにちは。
今回は年齢別の妊娠率と費用に関する話題です。
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紹介したいポイント
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不妊の原因として挙げられる大きな要因の1つとして「年齢」が挙げられます。日本では女性の社会進出によって晩婚化が進んでおり、体外受精を実施する方の40歳以上の割合が40%を占めています(図1)。そのため、子供を希望する時には卵巣予備能、すなわち妊娠率が低下する可能性が指摘されています。
図1. 日本産科婦人科学会が公開している年齢別の治療件数
では実際、年齢が高い方の妊娠率はどの程度なのでしょうか?
いくつかの報告を見てみましょう。
論文①
スコットランドの病院から報告された論文では、年齢を大きく4つに分類して妊娠率を報告しています。表1に示すように、年齢が上がるにつれて、卵巣を刺激するために使用する薬の量が増加していますが、刺激をしてもうまく卵が育たず、キャンセルとなる例も増加しています。また、妊娠率は低下し、流産率が上昇する点も日本産科婦人科学会が提示しているデータと合致しています。
表1. 年齢群別の妊娠率
また、お子さんを1人授かるためにかかった費用についても報告しています。加齢に伴って妊娠率は低下するものの、お子さんを授かるためにかかる費用は40歳頃までは大きな差は見られません。ただし、40歳を過ぎると費用も急激に高額となっていることが分かります(図2)。これは加齢に伴って採卵を実施しても卵子が取れない場合や、卵子が取れたとしても胚が上手く育たないことから治療費がよりかかっている可能性が考えられます。
図2. 子供を1人授かるためにかかった費用
論文②
最近、日本国内からの報告においても年齢別の妊娠率が報告されています。こちらの論文では、患者さんが2年間治療を続けた際の累積妊娠率を算出しています(図3)。図を見てみると、3-4回目の胚移植までは累積妊娠率の上昇が見られます。ですが移植回数が多くなると、妊娠率に差はあるものの、どの年齢においても一定の値で留まります。不妊治療の一番難しい点は、治療を続けたからと言って100%妊娠出来るわけではないという点です。ただし、この論文では着床不全の要因については述べられていないため、更に検討する余地があります。
図3. 2年間継続して治療を実施した症例の累積妊娠率
妊娠が成立するためには、胚盤胞と母体、両方の条件が整っている必要があります。最初に書いた「年齢」が不妊の原因になる理由は、女性の年齢上昇に伴って正常な染色体を持つ卵子の割合が少なくなるためです。
また、胚の着床・妊娠成立の維持には母体側の様々な要因が関与しています。着床不全に関する検査としてはホルモンの異常や子宮内細菌叢の乱れ、着床タイミングのズレなど、様々な項目が報告されています。
今回紹介した論文では、そういった母体側の原因に関して議論されておらず、詳細な着床不全の検査については今後議論する必要がある点です。
当院では、複数回移植を実施しても妊娠に至らない方には反復着床不全の検査を実施しております。なかなか妊娠に至らない方で、着床不全の検査を実施したことが無い方は一度検討していただくことも一案かもしれません。わからない点、気になる点があった際には、いつでも当院へお問合せ下さい。
研究支援部
竹重勇哉
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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