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医療コラム

論文紹介 2025.03.10

【論文紹介】4PN由来胚盤胞移植により出生した健常児の報告

私たち培養士は、体外受精や顕微授精後に受精卵の核(これをPNといいます)を見て正常受精かどうかを判断しています。

卵子由来の核1つと精子由来の核1つの2つの核が見えた受精卵を正常受精(2PN)としています。

受精卵の中にはPNが1つしかないものや3つ以上見えているもの(異常受精胚)もあり、胚盤胞へは成長する胚もありますが、流産や胞状奇胎の原因となるため、昔から移植はしておりませんでした。

 

近年、3PNのような異常受精胚でもPGT-Aを行うと遺伝子型は正常と診断されることがあり、その後移植して健常児を出産された、という報告があります。

※現在当院ではこのような報告をもとに、1PN、2.1PNという受精卵は培養し、胚盤胞に到達したら移植可能としております。

 

 

今回は、4PNという受精確認時に4つの核が見えた異常受精由来の胚盤胞の移植で健常児を出産した、というフィンランドの症例報告の論文をご紹介いたします。

 

Healthy live birth following embryo transfer of a blastocyst of tetrapronuclear (4PN) origin: a case report

(Peter et al.,2023)

 

対象患者の治療経緯は以下です。

・36歳夫婦、不妊原因は男性因子(無精子症)

・TESE精子を用いてICSIを行うも妊娠判定出ず

・ドナー精子を用いてICSIを行うも妊娠判定出ず、胚の質もよくなかった

・ドナー精子とドナー卵子を用いてICSIを行った

 

ICSIの結果、1個の2PN、4個の3PN、1個の4PNが得られました。

2PNは培養3日目で移植を行い、残りの異常受精胚は培養5日目で胚盤胞に育った3個の胚に対して胚生検を行い凍結しました。これは将来PGT-Aを行う可能性を考えてです。

2PN由来胚の移植判定は陰性だったため、異常受精胚の染色体検査をしてみると、4PN由来胚のみ正常な胚であることが分かりました。夫婦は医師と相談後、その胚を移植し、妊娠・出産に至り、その児は現在4歳となり、正常な発達を遂げているということです。

 

今回移植された胚は、当院同様タイムラプスインキュベーターで培養されており、核の出現場所から4つの核のうち1つは精子由来、残り3つは卵子由来の核であることがわかり、卵子由来の3つの核の大きさは小さく、体積の合計が精子由来の1つの核の体積と等しいのではないか、と考えられています。

また遺伝子型が正常であった胚は、ほかの胚に比べ成長速度が速い傾向にありました。このようなことも今後正常胚を見分ける手段になるのではないかと考察されております。

 

移植後については羊水検査や児の遺伝子検査は行っていないため、詳細は不明ではありますが、普段は治療に用いない胚からも健常児が産まれる、というのはやはり大きな発見であると思います。

国によって治療にかかる費用や検査料金は異なるため、一概によいとは言えませんが、正常受精がなかなか得られない方にとっては、有益な情報かもしれません。

 

PGT検査は費用も多くかかってきます。PGT検査以外でも成長速度や核の形態などで正常胚の特徴が分かるようになれば、より早期に妊娠に近づけるようになりそうです。

 

PGTが普及するにつれて新しい情報もどんどん出てきます。

私たち培養士も日々情報をアップデートしながら、業務に取り組んでいきたいと思います。

 

盛岡培養部

藤井

 


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