論文紹介 2025.05.04
当院ではEmbryoScope+というタイムラプスインキュベーターにて、患者さまよりお預かりした胚(受精卵)を培養しております。
この度、EmbryoScope+に搭載されているAIによる胚にスコアをつけるシステムであるiDAScore®の有用性に関する論文が日本受精着床学会誌に採択されました。
昨年の8月に開催された受精着床学会にて発表した内容を論文化したもので、
「iDAScore®の妊娠予測性能の検討」@第42回日本受精着床学会
こちらのコラムにて検討した内容を紹介しております。
簡単に内容をご紹介いたします。
【要旨】
本研究では、タイムラプスモニタリングシステムを用いたAIによる胚スコアリングシステムiDAScore®のv1.0およびv2.0モデルについて、39歳以下の症例を対象に妊娠継続(12週)との関連性を後方視的に解析した。その結果、両モデルのスコアと妊娠継続のAUCはいずれも0.630であり、iDAScore®が妊娠予測に一定の有用性を有することが確認された。
特にv2.0モデルにおいては、スコアの分布幅が広く、スコアごとの妊娠継続率の直線的な相関もより明確に示されたことから、胚の選別精度が向上している可能性が示唆された。
さらに、スコアを四分位数で4群に分けた解析では、v1.0およびv2.0ともに、同一スコア帯であればグレードによらず同等の妊娠継続率を示すことが分かった。また、グレードにかかわらず高スコアを示した胚においては高い妊娠継続率が期待できるが、4AA胚ではどのスコア帯でも安定した妊娠継続率を示すことから、iDAScore®は形態評価と併用することで、より妥当性の高い胚選択が可能となると考えられる。
※要旨はここまで※
小話となりますが、私自身は数回の論文作成の経験があります。
一般的に論文を作成し提出した後は、研究の質や信頼性を確かめるために、その研究のプロフェッショナルに「査読」(論文内容の審査)をしていただきます。
査読者から結果や考察の不十分さなどを指摘され、追加のデータ解析や内容を適切なものへ修正し、再度査読をしてもらい、内容が十分であれば無事に採択されます。
この査読後の修正は骨の折れる作業であり、今回の論文はとても苦しい思いをして書き上げた記憶があります。その一方で、査読でいただいた指摘を修正すると見違えるほど素敵な論文になった、というようなこともあり、修正作業を通してプロフェッショナルの視点を学ぶこともできます。
当院では、学会発表や学術誌への論文投稿を積極的に行っております。
昨年度の学術活動の内容をまとめたコラム:「胚培養士が持つもう一つの役割」 クリニックが学術活動を行う理由
私は学術活動を通して、世界の研究や当院のデータをしっかりと読み解くことで、患者さまの妊娠の実現につながる後押しになると考えています。
今後も培養部では学会報告や論文などをコラムにて紹介してまいります。
ぜひ次回以降もコラムを確認していただきますと幸いです。
仙台培養部
宮本 若葉
診療科目:婦人科・泌尿器科(生殖補助医療)
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